著者
塩田 祥子 坂下 文子 Shoko Shiota Ayako Sakashita
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.137, pp.211-226, 2021-05-31

社会福祉士の実習における「現場実習」段階は,施設で過ごす利用者や,そこで働く職員を知る時間であり,実習全体の基盤となる段階である。その際,重度の障がいがある利用者が過ごす施設では,ケアワーカーに実習生の「担当」をしてもらうこともある。担当となったケアワーカーは,実習生にケアワークの何をどのように伝えていくのか,自らの判断に委ねられ,悩ましいところである。実習指導者は,担当のケアワーカーに「ある程度の裁量」を求めているが,その曖昧さが,ケアワーカーの迷いにつながっている。特に,実習生にケアワークの実際をどこまでみせるか否かは,利用者の権利にかかわってくるため,迷いも募る。また,利用者のそばにいることが多いケアワーカーの実践を見学することを通して,実習生は利用者理解を深めることができる。そのため,実習指導者は,実習生の指導に当たって,ケアワーカーと連携していくことが求められる。具体的には,施設外での学びの機会が多い社会福祉士と,利用者の日常を支えるケアワーカーとの情報量の違い,解釈の違いを理解する。そして,常勤,非常勤職員も含めて,わかりやすく情報を伝達していく。さらには,組織として,実習生を任されたケアワーカーの戸惑いを支える体制づくりが求められる。実習生に利用者理解を促すためにも,介護現場に多く配置されているケアワーカーが実習生の指導に対してどのように思っているのか,その声を,今後も聞き続けることが大切となる。研究ノート(Note)