著者
塩田 祥子 Shoko SHIOTA 花園大学社会福祉学部 Faculty of Social Welfare Hanazono University
出版者
花園大学社会福祉学部
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.31-40,

わが国の福祉現場においてスーパービジョンの浸透は十分でない。なぜなのか。そのことを本研究では文献により整理した。そして、福祉現場におけるスーパービジョンの課題についてまとめた。根づかない理由として、(1)同職種間スーパービジョンが困難であり、かつ、経験値でスーパーバイザー役割が決まる、(2)管理的立場からのスーパービジョンの不理解のために、スーパービジョンの形骸化がおこる、(3)日本人はスーパービジョン関係といった契約関係よりも、感覚的な人間関係に重きを置く、といったことがあげられる。欧米発の理論をわが国の福祉現場にそのまま当てはめようとしても無理が生じて当然である。その現場ごとに応じたスーパービジョンを模索していくことが求められる。In Japan, supervision in the welfare services is not sufficiently widespread. In this study, we classify the literature on its reasons and summarize the issues of supervision in welfare services. The reasons why supervision is not sufficiently widespread include the following factors: 1) Supervision among people in the same type of occupation is difficult, and the role of supervisor is determined by the amount of experience. 2) Since supervision is not understood from a management standpoint, it loses its substance. 3) Japanese people emphasize informal human relationships rather than contractual ones such as supervision relationships.Although theories from Western countries are directly applied in Japan, they are naturally unsuitable to the Japanese culture. Therefore, it is necessary to continue seeking methods for increasing supervision, depending on the welfare services.
著者
塩田 祥子 シオタ ショウコ Shiota Shoko
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.116, pp.105-122, 2016-03

研究ノート(Note)新カリキュラムが導入され,実習内容は,実習生に社会福祉士の業務や役割をみせることに重点が置かれた。そして,実習内容にケアワーク実践を組み込むことに否定的となった。そのことは,ケアワーク実践なしに,実習生が利用者と関わり,関係を築くことを求めている。しかし,実習生がどのように利用者と関わり,利用者の理解を深めていくのか,その方法は明確ではない。そのため,実習においては,ケアワークとの差別化に固執するのではなく,社会福祉士としての利用者理解の方法,視点について具体的に考える議論が必要である。そして,実習生が利用者との関わりを大切にする環境を整えていくことが求められる。それは,実習内容からケアワークを取り除くといった安易なことではなく,ソーシャルワーク,ケアワーク,それぞれの独自性を尊重することにつながる。The content and practices of training in the new curriculum for social workers emphasizes teaching the trainees the duties and roles of certified social workers. It has turned away from the inclusion of hands-on practicum care work with the clients. Although the goal is to encourage trainees to interact and build relationships with their clients without having practiced care work. There are no clear standards or guidelines for approved methods for how to appropriately and effectively interact with clients or gain a better understanding of the clients. Hence, the training needs a discussion about the methods and perspectives by which certified social workers gain an understanding of the population that they serve rather than obstinately trying to differentiate it from care work. Moreover, the training environment should place great value on trainees' interactions with clients to create respect for the unique features of both social work and care work, which does not simply mean the removal of care work from the training content.
著者
福富 昌城 坂下 晃祥 塩田 祥子 Masaki FUKUTOMI SAKASHITA Akiyoshi SHIOTA Shoko 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 花園大学社会福祉学部 Faculty of Social Welfare Hanazono University Faculty of Social Welfare Hanazono University Faculty of Social Welfare Hanazono University
出版者
花園大学社会福祉学部
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
no.20, pp.9-19, 2012-03

本報告はケアマネジャーを対象としたグループ・スーパービジョンの連続研修会における調査の結果である。調査は、参加者がどのような学びをしたのかを明らかにすることを目的とした。調査結果として、参加者は「既に得ている情報や利用者像を異なった角度から見直す」ことで「ケースの見方」を深め、事例検討会/グループ・スーパービジョンにおいて「事例提供者の努力を承認する姿勢」を持つことで支持的な関わりを学んでいることが理解できた。
著者
塩田 祥子 坂下 文子 Shoko Shiota Ayako Sakashita
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.137, pp.211-226, 2021-05-31

社会福祉士の実習における「現場実習」段階は,施設で過ごす利用者や,そこで働く職員を知る時間であり,実習全体の基盤となる段階である。その際,重度の障がいがある利用者が過ごす施設では,ケアワーカーに実習生の「担当」をしてもらうこともある。担当となったケアワーカーは,実習生にケアワークの何をどのように伝えていくのか,自らの判断に委ねられ,悩ましいところである。実習指導者は,担当のケアワーカーに「ある程度の裁量」を求めているが,その曖昧さが,ケアワーカーの迷いにつながっている。特に,実習生にケアワークの実際をどこまでみせるか否かは,利用者の権利にかかわってくるため,迷いも募る。また,利用者のそばにいることが多いケアワーカーの実践を見学することを通して,実習生は利用者理解を深めることができる。そのため,実習指導者は,実習生の指導に当たって,ケアワーカーと連携していくことが求められる。具体的には,施設外での学びの機会が多い社会福祉士と,利用者の日常を支えるケアワーカーとの情報量の違い,解釈の違いを理解する。そして,常勤,非常勤職員も含めて,わかりやすく情報を伝達していく。さらには,組織として,実習生を任されたケアワーカーの戸惑いを支える体制づくりが求められる。実習生に利用者理解を促すためにも,介護現場に多く配置されているケアワーカーが実習生の指導に対してどのように思っているのか,その声を,今後も聞き続けることが大切となる。研究ノート(Note)
著者
塩田 祥子 谷口 雄哉 シオタ ショウコ タニグチ ユウヤ Shiota Shoko Taniguchi Yuya
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.129, pp.29-43, 2019-05-31

論文(Article)高齢者虐待の被養護者の大半が、要介護認定を受けているにもかかわらず、ケアマネジャーから、地域包括支援センター(以下、包括)へ相談、連絡に至る件数は十分ではない。その理由を追及し、今後の高齢者虐待対応に活かしていく必要がある。そのため、実際、高齢者虐待対応にあたっている社会福祉士と、包括の外部スーパーバイザーがケアマネジャーから、これまで相談、連絡があった高齢者虐待事例を振り返る作業を行った。その結果、養護者、被養護者の特性、また、置かれている状況に応じて、ケアマネジャーの高齢者虐待の捉え方に差異があった。さらに、ケアマネジャーへのインタビューからは、地域包括支援センターの虐待対応等の動きが「見えにくい」という指摘があった。以上のことを踏まえて、日頃のケアマネジャーからの包括への信頼が、高齢者虐待対応にリンクしていることが分かった。それゆえに、包括の役割である「権利擁護の実践」と「ケアマネジャーへの後方支援」の円滑な連動が求められることを再認識した。さらに、社会福祉士自身が、ケアマネジャーを「同じ相談援助の専門職」として捉えきれているのかといった「ケアマネジャーへの視点」を確認していく必要性を感じ、そのことが日頃の「ケアマネジャーへの後方支援」の振り返りになると同時に、「権利擁護の実践」につながることがわかった。