著者
坂下 碧 南学 正臣
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.263-274, 2022-07-25 (Released:2022-09-07)
参考文献数
82

腎性貧血は慢性腎臓病に高頻度で合併し,貧血を適切に治療することは,CKD患者の余命延長や身体機能の改善につながる.現状のヒトエリスロポエチン(EPO)製剤による治療では,血栓塞栓症などの副作用やESA抵抗性の問題,高額な治療費・注射の必要性など,社会的な負担が大きい.腎性貧血の新規治療薬であるHIF-PH阻害薬は低酸素誘導因子を安定化させることにより内在性のエリスロポエチンの産生を高め,鉄利用を効率化する.これにより,従来のEPOを使用した治療と比較して,腎性貧血に対してより生理的なメカニズムでの治療が見込め,経口薬であることから非侵襲的であり通院間隔をのばすことも可能となるなどの利点がある.一方でHIFの多面的な作用により,留意すべき副作用も存在する.現在5種類のHIF-PH阻害薬が使用可能となっており,これらの薬剤の臨床研究で明らかとなっている知見なども含めて概説する.