- 著者
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南学 正臣
- 出版者
- 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
- 雑誌
- 日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.2, pp.132-136, 2012-11-30 (Released:2012-12-22)
- 参考文献数
- 20
腎臓は酸素消費が多く,更に動静脈シャントのため酸素の取り込み効率が悪いため,低酸素状態になりやすい臓器であり,様々の要因によって引き起こされる尿細管間質の慢性低酸素が腎臓病のfinal common pathwayとして注目されている。これまで,様々な方法により腎臓病の実験動物モデルで,腎臓の低酸素が証明されてきた。更に,最近ではBOLD-MRIにより,ヒトの腎臓病において腎臓の低酸素が証明されている。生体は低酸素に対する防御機構として,転写調節因子hypoxia inducible factor(HIF)を備えている。現在我々が日常臨床で行っている腎臓病治療法の多くは,腎臓の低酸素改善効果を持っているが,HIF活性化薬の臨床応用が期待されている。低酸素はヒストン修飾を調節して,長期的な遺伝子発現の変化を引き起こす可能性があり,低酸素によるエピジェネティックな変化は重要な検討課題となっている。