著者
坂崎 文俊
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.259, 2020 (Released:2020-03-01)
参考文献数
3

健康食品市場は拡大の一途である.日本の公的な健康食品制度に機能性表示食品が加わり,機能性表示食品は特定保健用食品に比べて届出のハードルが低いため,実にたくさんの届出が行われている.昭和46年(1971年)厚生省薬務局長通知(通称「ヨンロク通知」)により毒性の強いアルカロイドを健康食品の関与成分にできないこともあり,機能性表示食品の関与成分にはポリフェノール類が多い.ポリフェノール類は,酸化ストレスに対して防御機能を有すると考えられる.酸化ストレスは体の様々な部分で悪影響を及ぼすため,抗酸化物質の利用は多様な健康効果があると期待される.最近,心血管障害および高血圧に対するポリフェノール類の作用について,ヒトを対象とした疫学研究のシステマティック・レビューが報告された.食物摂取頻度調査票とアメリカ合衆国農務省の作成する栄養成分データベースから食品成分の摂取量を計算した前向きコホート研究6報を総合した結果,ポリフェノール類の分類の中でもアントシアニン類の効果が統計的に有意のようである.ここで紹介する論文は,2型糖尿病モデルマウスに,アントシアニンを豊富に含有するタルトチェリーの抽出物を投与した結果,炎症性アディポサイトカインの産生を抑制したとの報告である.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Del Bo’ C. et al., Nutrients, 11,1355(2019).2) Godos J. et al., Antioxidants, 8,152(2019).3) Nemes A. et al., Nutrients, 11,1966(2019).