著者
坂本 和靖 森田 陽子
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、人間の行動規定要因としての規範意識の在り方が(Akerlof and Kranton2000)、家計行動に与える影響に関する実証分析を行った。ここでは規範として「性別役割分業意識(男性は仕事、女性は家事・育児)」に注目し、それが既婚女性の時間配分に与える影響を計測した。先行研究に倣い、(年齢・学歴・居住地域から推計された)女性の潜在的稼得所得を軸に分析した結果(Sakamoto and Morita 2020)、夫所得よりも潜在的稼得所得が高い女性ほど就業せず、稼得所得を抑制させる傾向が、また夫よりも実際の稼得所得が高い女性は逸脱行為を補うため家事時間が長くなる傾向が確認された。
著者
北村 行伸 坂本 和靖
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.31-46, 2007-01
被引用文献数
1

This paper explores the recent marriage behavior in Japan from the view point of generational relationship. Using the Japanese Panel Survey on Consumers (The Institute for Research on Household Economics), we investigate the marriage behavior in the 1990s and the early 2000s. We find that (1) financial transfers from the parents reduce the probability of marriage only for those whose parents were born before 1945 and those who entered the labor market during the bubble period in the 1980s. (2) For those who entered the labor market after the bust of the bubble economy in the 1990s, the probability of marriage was lowered because of either longer labor hours or unstable job position. (3) In general, marriage decisions cannot be explained by the income ratio between father/parents and a possible husband, except the case in which the father'/parents' income was above 500 million yen. In this case, the probability of marriage became lower.本論文は少子高齢化問題の核心にあるとされる,未婚化・晩婚化などの結婚行動の変化を世代間関係という切り口から解明しようとするものである. 『消費生活に関するパネル調査』を用いて,結婚経験率が大きく落ち込んだ1990年前半から2000年代前半にかけての晩婚・非婚化現象の要因分析を行った.ここで得られた知見は以下の通りである.第1に,親同居未婚者にとって,親からの所得移転は結婚確率を低下させる効果が確認された.ただし,それは親が戦前・戦中世代,子がバブル世代においてのみでしか確認することができなかった.これは「パラサイト・シングル仮説」で描かれていた独身者像が一時的なものであったことを示している.第2に,子がバブル崩壊以降世代において,長時間就業している者,初職でよい就職先につけなかった者は結婚確率が低下する傾向がみられた.第3に,「乗り換えモデル」を検証すべく,父親と夫候補者の所得比が結婚に与える影響をみたところ,親の世代に関係なく,「親の所得が500万円以上」のケースにおいてのみ結婚確率を引き下げていることがわかった.