著者
五十嵐 庸 中村 果歩 坂本 廣司 長岡 功
出版者
ファンクショナルフード学会
雑誌
Functional Food Research (ISSN:24323357)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.29-33, 2019 (Released:2020-01-01)
参考文献数
15

ヒト軟骨培養細胞株における,オートファジーマーカー分子の発現に対するグルコサミン(glucosamine,GlcN)の効果を検討した.その結果,LC3-IIやbeclin-1などの発現が,GlcNにより有意に増加することが明らかとなった.また,同時にサーチュイン(sirtuin,SIRT)1遺伝子の発現も,GlcNにより有意に増加した.さらに,GlcN添加によるLC3-IIの発現増加が,SIRT1阻害剤であるEX527で阻害された.さらに,mammalian target of rapamycin(mTOR)の関与を検討するために,mTORの標的分子であるS6 キナーゼ(S6 kinase,S6K)のリン酸化を調べたところ,S6Kのリン酸化に対してGlcNは影響しないことが明らかとなった.そこで,mTORを介さずにオートファジーを負に制御するp53のアセチル化状態を検討したところ,p53のアセチル化がGlcNによって有意に減少することが明らかとなった.なお,SIRT1は脱アセチル化酵素としてp53を脱アセチル化し不活性化することが知られている.以上の結果より,GlcNは軟骨細胞においてSIRTタンパク質の発現を亢進し,その標的分子であるp53を脱アセチル化し不活性化することによって,オートファジーを誘導するというメカニズムが考えられた.
著者
染谷 明正 坂本 廣司 長岡 功
出版者
ファンクショナルフード学会
雑誌
Functional Food Research (ISSN:24323357)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.67-71, 2019 (Released:2020-01-01)
参考文献数
10

グルコサミンは,関節の痛みや違和感などの症状を緩和することを期待し,サプリメントとして使用されている.そして,このような関節症状の緩和にはグルコサミンの抗炎症作用が関与していると考えられている.われわれは,グルコサミンが関節滑膜細胞からの炎症性サイトカインの産生を抑制すること,そして,その抑制には O -N-アセチルグルコサミン( O -GlcNAc)修飾が関与していることを報告している.一方,炎症性サイトカインの産生には,転写因子NF-κBが重要な役割を果たしている.本研究では滑膜炎症におけるグルコサミンの炎症抑制機構を調べるため,ヒト関節滑膜細胞株MH7Aを用い,NF-κBの活性化に及ぼすグルコサミンの影響および, O -GlcNAc修飾との関連性について調べた. その結果,グルコサミンは,IL-1β刺激で起こるNF-κB p65サブユニットのリン酸化(活性化)や核への移行を抑制した.一方, O -GlcNAc修飾を阻害するアロキサンは,グルコサミンによるこれら抑制作用を消失させた.またグルコサミンは,IL-1β刺激によって起こるNF-κBとIκBα(NF-κBと結合して核移行を阻害するタンパク質)との解離を抑制し,アロキサンはこの抑制効果を消失させた. これらのことからMH7A細胞において,グルコサミンは O -GlcNAc修飾を介して,IL-1β刺激によって起こるNF-κBからの IκBαの解離を阻害し,NF-κBのリン酸化や核への移行を抑制することで,炎症性サイトカイン遺伝子の転写を抑制し,その産生を低下させる可能性が示唆された.