著者
染谷 明正 長岡 功 鈴木 香
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

グルコサミンは関節機能の改善効果をもつ機能性食品素材として広く知られている。申請者らはこれまでグルコサミンの抗炎症作用および、その分子メカニズムを解析してきた。一方、その過程でアンチエイジング作用があることを示唆する結果が得られた。本研究では、グルコサミンの新たな機能としてのアンチエイジング効果およびそのメカニズムについて調べる。そのためにアンチエイジング作用を発揮するためのグルコサミンタターゲット分子を同定し、老化細胞ならびに老化モデル動物を用いて同定された分子の作用メカニズムを検証する。
著者
染谷 明正 坂本 廣司 長岡 功
出版者
ファンクショナルフード学会
雑誌
Functional Food Research (ISSN:24323357)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.67-71, 2019 (Released:2020-01-01)
参考文献数
10

グルコサミンは,関節の痛みや違和感などの症状を緩和することを期待し,サプリメントとして使用されている.そして,このような関節症状の緩和にはグルコサミンの抗炎症作用が関与していると考えられている.われわれは,グルコサミンが関節滑膜細胞からの炎症性サイトカインの産生を抑制すること,そして,その抑制には O -N-アセチルグルコサミン( O -GlcNAc)修飾が関与していることを報告している.一方,炎症性サイトカインの産生には,転写因子NF-κBが重要な役割を果たしている.本研究では滑膜炎症におけるグルコサミンの炎症抑制機構を調べるため,ヒト関節滑膜細胞株MH7Aを用い,NF-κBの活性化に及ぼすグルコサミンの影響および, O -GlcNAc修飾との関連性について調べた. その結果,グルコサミンは,IL-1β刺激で起こるNF-κB p65サブユニットのリン酸化(活性化)や核への移行を抑制した.一方, O -GlcNAc修飾を阻害するアロキサンは,グルコサミンによるこれら抑制作用を消失させた.またグルコサミンは,IL-1β刺激によって起こるNF-κBとIκBα(NF-κBと結合して核移行を阻害するタンパク質)との解離を抑制し,アロキサンはこの抑制効果を消失させた. これらのことからMH7A細胞において,グルコサミンは O -GlcNAc修飾を介して,IL-1β刺激によって起こるNF-κBからの IκBαの解離を阻害し,NF-κBのリン酸化や核への移行を抑制することで,炎症性サイトカイン遺伝子の転写を抑制し,その産生を低下させる可能性が示唆された.