著者
坂本 真士 田中 江里子 影山 隆之
出版者
日本精神衛生学会
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.44-53, 2006-12-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
28

本研究では, 自殺の新聞報道のされ方について検討するため, 代表的な全国紙 (朝日, 毎日, 読売各紙) を取り上げ, 「ネット自殺」以降に自殺を報じた記事の内容を分析した。具体的には, 上記3紙朝夕刊を対象とし, 2003年2月11日からの1年半を調査期間とした。新聞記事検索データベースを使用し, 検索語を「自殺」として, 検索語が見出し, 本文, キーワード, 分類語のいずれかに含まれている記事を抽出した。その後, 記事の見出しから, 明らかに自殺報道ではないと判断でぎる記事を除外し, さらに記事の内容から, 自殺未遂, 自殺と判断できないもの, 海外で起きた自殺などを分析対象から除外した。最終的に分析の対象となったのは, 2, 334件の記事であった。諸外国の自殺報道のガイドライン, さらに, 日本の先行研究を参考に, 記事の評価基準を作成した。本稿では, 掲載箇所および文字数, 見出し, 自殺の手段の記載, 遺書および自殺の原因・動機について報告した。分析の結果, 記事の平均文字数は各紙とも300字程度であったが, 標準偏差が大きかった。また, 見出しに「自殺」という文字がある記事は50.8%, 記事本文中で自殺の手段に言及しているものは92.5%, 単純化した原因・動機について記載されていたのは24.8%の記事であった。さらに報道されていた自殺の手段を見ると, 多い順に, 飛び込み, 総首, ガス, 飛び降りであったが, この順は実際の手段別自殺件数とは異なっていた。これらの結果から, 以下の5点が問題点として指摘された。ニュースバリューのある自殺が報じられるので, 報道が自殺全体の実態を反映していないこと, 詳細な手段が報じられることが多く, 自殺の模倣を招く危険性があること。自殺の原因・動機が単純化して報道されやすいため, 実際の原因・動機が伝わっていない可能性があり, 自殺に対し一面的な見方を人々に植え付けてしまい, 自殺を合理化してしまう可能性があること, である。
著者
坂本 真士
出版者
大妻女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本年度は昨年度の成果をもとに、抑うつ的な自己注目のあり方と適応的な自己注目のあり方をモデル化した(この成果については、本年度の日本心理臨床学会および日本心理学会にて発表した)。そして、適応的な自己注目のあり方の指導を取り入れた、抑うつ予防のためのプログラムを作成し、女子大学生(1年生、社会心理学専攻)21名を対象に実施した。実施期間は平成13年4月から7月であった。本研究で1年生前期において実施としたのは、大学における適応・不適応を考える上で、入学直後から1年次前半が特に重要な時期だからである。この時期、生活リズムの変化、新しい人間関係づくり、勉学の問題など様々な変化に新入生はさらされている。自分について振り返る時間が増えた分、不適応的な自己注目のために抑うつなどの問題を発生させる可能性も高いと考えられる。申請者らは、本年度前期に週1回の割合で心理教育予防プログラムを実施した。実施は授業の単位とは全く関係のない「自主ゼミ」という形で行い、ボランティアで参加者を募った。前半では、参加者同士知り合うためのグループワークを積極的に取り入れた。また、自分を知るために様々な心理テストを実施した。実施した心理テストについては実施の翌週に申請者が解説した。これによって客観的に自己をとらえるようにした。また、ホームワークを課して、事態に対する認知の仕方を明確にした。後半では、認知療法的なパースペクティブから、自己に関するネガティブに歪んだ認知の修正、自己のポジティブな側面に対する注目などについて指導した。10月に実施した事後アンケートから、この予防プログラムは一定の成果を収めていることがわかった。