著者
小西 吉呂 名嘉 幸一 和氣 則江 石津 宏
出版者
日本精神衛生学会
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.62-71, 2000-11-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
9

実態の解明が不十分な性被害に関するデータを得るとともに, 性被害にともなう具体的援助ニーズを探ることを目的として, 大学生1, 106人を対象に質問紙による調査を実施した (有効回答1, 072人)。その結果, 女性801人中569人, 男性271人中65人が何らかの性被害を経験していることが明らかになった。しかし, こうした性被害のほとんどは警察へ通報されていなかった。「レイプ」もまったく通報されていなかったが, これはすべての「レイプ」が「顔見知り」によって犯されていたことと関係していると考えられた。性被害経験者で何らかの援助を受けた人は634人中427人であり, 援助の種類は友人・知人からのなぐさめやアドバイスといったインフォーマルなものが中心であった。また, 求められる援助についても, 家族や友人などの身近な人に援助を求める傾向が強かった。したがって, 性被害経験に対しては, インフォーマルなサポートにも一定の意味があると考えられた。他方で, 専門的な援助では, 心理療法士 (臨床心理士) によるカウンセリングに最も高い期待が示された。これは, 性被害経験が身体よりも心の傷や心のケアと直結することを端的に示しているといえよう。以上, 予想を上回る多数の人に性被害経験のあることが明らかになったが, そうした被害者への安定した公的専門的援助システムは整備されていないか, または十分に機能しておらず, 身近な人に頼るか, 自分だけで悩む孤立した被害者の姿も浮き彫りにされた。
著者
中塚 尚子
出版者
日本精神衛生学会
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.29-33, 1998-05-31 (Released:2011-03-02)
参考文献数
2
著者
岩崎 直子
出版者
日本精神衛生学会
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.67-75, 2001-06-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
43

男性の受ける性的被害は, 古くから存在してきたにも関わらず, 長い間タブー視されてきた問題である。そのため被害事実の開示が難しく, 多くの被害者が, 必要なサポートも満足には受けられずにいるのが現状である。ここでは, まずこの問題に関して, 各関係分野の専門家をはじめとする社会の人々の充分な理解を得るため, 被害者のおかれている状況や付随する問題点, 被害後にみられる身体的・精神的影響, セクシュアリティの揺らぎ, 人間関係への影響などについて, 主に海外の研究報告を参考にまとめて紹介した。この問題提起をきっかけとして, 具体的なサポートへの取り組みがなされるよう, 今後の国内における啓発活動や実態調査, 相談員の研修などについても提案を試みた。
著者
岡部 祥平
出版者
日本精神衛生学会
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.16-19, 1993-06-10 (Released:2011-03-02)
参考文献数
2
著者
沖田 肇
出版者
日本精神衛生学会
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.10-15, 2001-06-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
10
著者
白石 弘巳
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION FOR MENTAL HEALTH
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.13-21, 1997

日本人の海外出国者は年間1, 500万人を越え, 遅ればせながらさまざまな障害を持つ人たちが海外旅行に出かけるようになってきたが, 精神障害者の海外渡航については, 当事者にとっての弊害についての報告が多い。著者は, 1996年5月12日から22日まで, やどかりの里やどかり研修センターが企画した海外旅行 (「メンバー交歓会, 於ロサンゼルス」) に精神障害に罹患しデイケアなどに通所中の6名の参加者とともに参加した。旅行中, 現地の患者団体である「プロジェクトリターン・ザネクストステップ」などの支援を受けて, 当事者の集会への参加, 4日間の船上キャンプ, 当事者宅へのホームステイなどを行い, 現地の当事者や専門家と交流を深めた。旅行期間中, 日本の当事者は不安や緊張に対して各自のコーピングスタイルを駆使して対処し, 随所に優れた生活技能を発揮した。最後まで大過なく, また, 帰国後も病状が悪化した人はおらず, 各自が旅行の体験に力を得て回復の道を歩んでいるように見えた。またこの旅行を通じて, 専門家として当事者の力を信じること, 傍らにいて当事者の援助のニーズに即応することの大切さが実感された。<BR>以上の結果を踏まえ, 海外旅行におけるノーマライゼーションの体験が, 長期的に見て精神疾患からの回復の一契機を提供する可能性を示唆した。さらに, 今回の海外旅行が, 当事者の力を信じること, 専門家はパートナーとして接すこと, 広く社会の抑圧に対抗する力を生み出していくこと, を目指して行われるエンパワーメント・アプローチの一事例であると位置づけ, 精神疾患に罹患した当事者が海外旅行に出かけることの意義について述べた。
著者
安田 美弥子
出版者
日本精神衛生学会
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.3-14, 2000-06-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
6
著者
岩崎 直子
出版者
日本精神衛生学会
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.52-61, 2000

性的被害の実態と, 被害者および周囲の人々へのサポートに関するニーズを調べるため, 大学生を中心とした男女学生277名を対象に, 質問紙調査を実施した。さまざまな性的被害に関して具体的な行為を提示し, 調査実施時点までの被害経験率を調べたところ, 女性の74.0%および男性の25.0%が何らかの被害経験を持ち「レイプ既遂」の被害率は3.4%であった。そのすべてが「友人・知人」「恋人」などの「顔見知り」から被害を受けた"date/acquaintance rape (DAR)"の被害者であり, 社会に蔓延する"real"rape像にはあてはまらないことがわかった。一方, 被害者を身近でサポートする重要な他者 (=SOs) は, 時に自らも被害の影響を受けることが知られているが, 回答者の約3割は, 自分の身近な人が性的被害経験を持つSOsであった。そのうちの7割以上が自分自身のためにも「何らかのサポートが必要である」と感じていた。これらの結果から, 今後の調査研究と被害者支援の方向性について考察した。
著者
大辻 隆夫 塩川 真理
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION FOR MENTAL HEALTH
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.69-78, 2000

共感 (empathy) には, 治療的共感と発達的共感が考えられる。本研究は, 後者の発達的共感について就学前児とその母親を対象とし, 特に幼児の不安に対する母親の応答と子どもの共感能力の関係を実験的に検討した。被験者の子どもには, 主としてMillerらを参考に構成した, 次の手続を通して共感指標を得た。(1) 闘病生活を送る子どもを主人公とするVTRを見せた後, その主人公に対する感情を尋ねる (感情報告)。(2) VTRの主人公に対し, 寄付を行うか否かを選択させる (向社会的行動)。(3) 道徳的葛藤場面における行動のしかたとその理由を尋ねる (道徳的推論)。被験者の母親には, 罪悪感等を原因として子どもが不安を喚起される場面を2コマの絵と物語 (PPSTE) で示した質問紙に, 被験者自身であればどのように子どもに応答するかを回答させる。母親の回答については, 受容-拒否および表出-道具の2軸に基づき応答を4つの型に分類した。筆者らは, 共感が認知的に知ること (cognitive knowing) よりもむしろ情動的に知ること (emotional knowing) に基礎づけられていることから, 子どもと母親の各指標間の関係を検討し, 母親の応答が幼児の共感性の発達に与える影響について, 次の知見を得た。母親による子どもの感情の代理的な表出及び感情的要求の理解の伝達等の受容-表出的応答は, 男児の共感性を高める (適切な感情反応: r=.684, p<.01及び高次の道徳的推論: r=.558, p<.02) が, 女児においてはこの限りではなく, そこに性差が見られた。