著者
鍋島 茂樹 増井 信太 坂本 篤彦 埜田 千里 菅沼 明彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.204-207, 2021 (Released:2022-07-29)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は24歳女性。第1病日より咽頭痛が出現。第2病日より38℃台の悪寒・発熱がみられたため第3病日に発熱外来を受診し,感冒と診断された。鼻咽頭スワブより PCR にて新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)遺伝子を検出したためホテルへ移動,しかしその後も連日高熱および嘔気が続いていた。第5病日の昼に主治医の指示により麻黄湯の内服を開始。内服後に発汗して解熱し,その後も発熱をみていない。しかし嘔気が増強したため,麻黄湯は1日のみで中止した。第7病日の PCR は陽性であったが,Ct 値ではウイルス量の低下が示唆された。麻黄湯はインフルエンザに有効であると報告されているが,本症例のように,インフルエンザ様症状の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しても有効である可能性が示唆された。また,副作用として嘔気を助長する可能性があるため,柴胡剤など他の方剤との組み合わせも考慮されるべきである。