著者
細田 智弘 柳澤 如樹 森岡 悠 菅沼 明彦 今村 顕史 味澤 篤
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.211-214, 2013-03-20 (Released:2014-12-22)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

We report on a previously healthy 56-year-old woman who was referred to our hospital with fever and progressive left foot pain. She had been bitten by a cat 7 days previously, and cephalosporins had been prescribed for treatment. However, her clinical symptoms deteriorated, and physical examination on admission was compatible with necrotizing fasciitis. Treatment with ampicillin-sulbactam and clindamycin was initiated. In addition, immediate surgical debridement was performed, resulting in therapeutic success. Culture of the necrotizing tissue grew multiple organisms, including Pasteurella multocida and Bacteroides caccae. Administration of appropriate antibiotics after a cat bite is essential for the prevention of potentially fatal complications.
著者
福島 一彰 柳澤 如樹 佐々木 秀悟 関谷 綾子 関谷 紀貴 菅沼 明彦 味澤 篤 今村 顕史
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.310-315, 2016-05-20 (Released:2017-11-17)
参考文献数
12

We present 3 cases of ocular syphilis in patients who had been newly diagnosed as having HIV. All the patients had only complained of ophthalmologic symptoms at the time of their initial visit. Treatment with penicillin was successful, resulting in no significant sequelae. Ocular syphilis may lead to reduced visual acuity or even blindness if left untreated. However, the diagnosis may be challenging, since patients may lack symptoms that are commonly observed in cases with primary and secondary syphilis. Considering the recent increase in the number of syphilis patients, clinicians should be aware of ocular syphilis and should have a high index of suspicion for syphilis in any patient at risk so as to ensure a prompt diagnosis.
著者
鍋島 茂樹 増井 信太 坂本 篤彦 埜田 千里 菅沼 明彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.204-207, 2021 (Released:2022-07-29)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は24歳女性。第1病日より咽頭痛が出現。第2病日より38℃台の悪寒・発熱がみられたため第3病日に発熱外来を受診し,感冒と診断された。鼻咽頭スワブより PCR にて新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)遺伝子を検出したためホテルへ移動,しかしその後も連日高熱および嘔気が続いていた。第5病日の昼に主治医の指示により麻黄湯の内服を開始。内服後に発汗して解熱し,その後も発熱をみていない。しかし嘔気が増強したため,麻黄湯は1日のみで中止した。第7病日の PCR は陽性であったが,Ct 値ではウイルス量の低下が示唆された。麻黄湯はインフルエンザに有効であると報告されているが,本症例のように,インフルエンザ様症状の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しても有効である可能性が示唆された。また,副作用として嘔気を助長する可能性があるため,柴胡剤など他の方剤との組み合わせも考慮されるべきである。
著者
柳澤 如樹 髙山 直秀 菅沼 明彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.7-11, 2009-01-20 (Released:2016-02-15)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

ジフテリア・百日咳・破傷風3 種混合(DPT)ワクチン接種の普及により,百日咳は乳幼児の間では既に稀な疾患となっているが,欧米で10 代から若年成人での発生増加がみられ,日本でも成人の百日咳患者や大学での集団発生が報告されている.青年・成人での百日咳予防のため,米国では成人用DPT ワクチンが認可されている.一方,我が国では成人用DPT ワクチン開発の動きは見られない.そのため青年・成人での百日咳予防のためには,国内で市販されている小児用DPT ワクチンを使用するほかない.我々は,小児用DPT ワクチンの接種量を0.2mL に減量して,30 例の成人に接種し,その効果と安全性を調査した.DPT ワクチン0.2mL 接種後に百日咳抗PT 抗体価は29 例で,抗FHA 抗体価も29 例で上昇がみられた.破傷風抗毒素価は,破傷風接種歴がないと思われる2 例を除いた28 例で上昇していた.小児と比較して接種局所の副反応の発現頻度は高かったが,発熱などの全身反応の出現率は低かった.現在市販されている小児用DPT ワクチン0.2mL を成人に接種することにより,健康上大きな問題なく,百日咳抗体価の上昇が得られると考えられた.
著者
石山 哲 鶴田 耕二 武市 智志 高橋 慶一 森 雅江 今村 顕史 菅沼 明彦 味澤 篤 根岸 昌功
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.135-140, 2008
被引用文献数
5

症例は37歳同性愛の男性で, 2002年3月下旬, 腹痛, 下痢を主訴に前医を受診, 小潰瘍を主体とした非特異的大腸炎と多発性肝膿瘍を認め, 赤痢アメーバ症が臨床的に強く疑われ, メトロニダゾールにて治療されていた. Human immunodeficiency virus (以下, HIV) 抗体陽性が判明したため, 4月初旬当院感染症科緊急入院, CD4陽性リンパ球数が224/ulとHIVによる低免疫状態が疑われた. 入院翌日, 右下腹部痛の急性増悪あり緊急CTにて遊離ガス像と多量の腹水を認めアメーバ性大腸炎の穿孔と診断し緊急手術を施行した. 穿孔部位は盲腸で, 穿孔部を利用した人工肛門造設術を施行した. 肝膿瘍は保存的に治療し, 1年後に人工肛門を閉鎖した.近年アメーバ性大腸炎, HIV感染とも増加傾向にあり, これらを念頭においた早期診断および治療が劇症化の阻止と救命に重要であると考えられた
著者
高山 直秀 菅沼 明彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.815-821, 2003-10-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

2000年1月から2002年12月までの間に当院に入院した113名の成人麻疹入院患者について年齢, 麻疹ワクチン接種歴, 感染経路, 最高体温, 有熱期間, コプリック斑や発疹の有無などの臨床症状を調査し, 同時期に入院していた1~5歳の小児麻疹患者と比較した. 患者の年齢分布では20代前半の若年成人患者が最も多く, 大多数の患者は麻疹ワクチン未接種, 麻疹未罹患であり, 感染経路は不明者が最も多かった. 臨床症状では咽頭痛を除いてコプリック斑, 咳嗽, 発疹などの出現率において小児麻疹患者と差がみられず, 入院期間はやや長い傾向がみられたものの有意差はなく, 有熱期間や最高体温にも有意差がなかった. 合併症は113例中17例にみられた. 成人患者では脳炎3例, 急性散在性脳脊髄炎1例と中枢神経系合併症が相対的に多く, 肺炎は4例と比較的少なかったが, 小児患者では中枢神経系合併症例はなく, 気管支炎・肺炎が45例中16例に, 仮性クループが1例に, 中耳炎が6例にみられた. 後遺症を残した小児例はなかったが, 軽度の後遺症を残した成人麻疹例が3例あった. 以上より, 成人麻疹入院患者の症状は小児期麻疹入院患者と同等ないしやや重症といえる.
著者
赤城 久美子 松永 るり 今村 顕史 味澤 篤 菅沼 明彦 根岸 昌功
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日皮会誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.1265-1270, 2004

1997年から2002年12月までに都立駒込病院を受診したAIDS関連Kaposi肉腫(Kaposi' ssarcoma:KS)29例を対象として,臨床像と治療成績および転帰を解析した.すべて男性で平均年齢45歳,男性同性愛者が72%を占めた.KS診断時のCD4陽性リンパ球数は平均107/μlで,病期分類ではT1I1S1が最も多く41%を占めた.経過を追えた27例の治療は,多剤併用抗HIV療法(highly active antiretroviral therapy:HAART)のみが13例,HAARTと放射線療法の併用7例,HAARTと全身化学療法の併用2例,HAARTと放射線療法および全身化学療法の併用1例,無治療4例であった.治療の結果は腫瘍消失(complete remission:CR)18例,腫瘍縮小(partial remission:PR)2例,死亡7例であった.併用療法を含めたHAART導入23例におけるKS消失症例(CR)は73.9%に認められた.全身化学療法はHAARTと併用して3例に施行し,ABV療法(doxorubicin,bleomycin,vincristine)を行った1例は死亡,liposomal doxorubicinを投与した2例はともにKS縮小効果が得られた.放射線療法もHAARTと併用して8例13部位に施行し,全例KS縮小効果が認められた.転帰についてHAART普及前(1985~1996年)と普及後(1997~2002年)に分けて比較した.HAART前の21例は診断後2年以内に全例が死亡したが,HAART後の27例では20例が生存している.KS診断後18カ月の生存率は,HAART前が19.0%でHAART後は74.1%となった.HAART普及以後,HAART導入とliposomal doxorubicinの長期継続によってAIDS-KSの治療成績は著しく改善した.