著者
大門 皇寿 山沢 英明 坂東 政司 大野 彰二 杉山 幸比古
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.522-525, 2004
被引用文献数
5

背景. 健康成人にみられたトウモロコシによる気道異物の1例を経験した. 症例. 症例は38歳の女性. 生来健康で特記すべき既往歴や誤嚥の原因となるような基礎疾患はなかった. 数日間続く喀痰, 咳嗽を主訴に当科を受診した. 胸部X線写真にて右上葉の無気肺を認め, 胸部CTではさらに軟部組織濃度の結節を右上葉支に認めた. 症状出現前におけるトウモロコシ誤嚥の事実を聴取したため, これを無気肺の原因と疑い気管支鏡検査を施行した. 右上葉支には嵌頓したトウモロコシを認めた. 通常の生検鉗子では把持不能であったため, バスケット鉗子を用いて収納したのちに摘出した. 右上葉の無気肺は数日で完全に消失し, 症状もすみやかに軽快した. 結論. 健康成人においても稀ではあるが気道異物をきたすことがある. 画像上無気肺を認めた場合には気道異物も常に念頭におき, 詳細な問診を行い, 遅滞なく気管支鏡検査を施行することが重要である.
著者
新井 直人 中山 雅之 新井 郷史 川﨑 樹里 花輪 幸太郎 黒崎 史朗 渡邊 真弥 間藤 尚子 坂東 政司 萩原 弘一
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.221-225, 2023-05-25 (Released:2023-06-13)
参考文献数
15

背景.肺末梢病変を呈する放線菌症は,気管支鏡検査で確定診断することが難しく,肺癌や肺結核との鑑別目的に外科的肺切除を必要とすることが少なくない.症例.47歳男性.咳嗽・血痰を主訴に受診した.胸部CTで右肺S1末梢に限局した浸潤影を認め,内部に気管支の拡張像を伴っていた.気管支鏡検査でガイドシース併用気管支腔内超音波断層法を用いて,病変から生検を複数回行い,嫌気培養の結果Actinomyces graevenitziiによる肺放線菌症と診断した.呼吸不全なく,6カ月間のアモキシシリン内服治療で陰影はわずかな瘢痕を残して消退し,その後再燃なく経過した.結論.内部に気管支拡張像を伴う肺末梢病変の鑑別に肺放線菌症が挙げられる.起因菌分離のための気管支鏡検査を施行する場合,病変内部で生検を複数回行い,さらに検体を嫌気培養に提出することが重要である.
著者
中曽根 悦子 山沢 英明 瀧上 理子 中山 雅之 間藤 尚子 中屋 孝清 坂東 政司 杉山 幸比古
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.205-209, 2013-03-25 (Released:2016-10-29)
参考文献数
14

背景.インフルエンザA (H1N1)2009では,鼻咽腔拭い液の迅速検査の感度は低いことが知られており,確定診断を得るのが時に困難な場合もある.症例. 33歳,男性. 2011年2月,発熱,咳嗽が出現し近医にて鼻腔拭い液のインフルエンザ迅速検査を施行したが陰性であった.その後呼吸困難が悪化,胸部X線で両側のすりガラス陰影を認め,当科を紹介受診した.鼻咽腔拭い液の迅速検査は計4回陰性,鼻腔拭い液のインフルエンザA (H1N1) RT-PCR検査も陰性であったが,気管支肺胞洗浄液のRT-PCR検査が陽性であり,インフルエンザA (H1N1)肺炎と診断した. ARDSに至る重症肺炎であったが,ペラミビルの連日反復投与を中心とした治療で改善した.結語.重症インフルエンザA (H1N1)肺炎では,下気道検体を積極的に採取しRT-PCRを施行することは,確定診断を得る上で有用である.ペラミビルの反復投与の有効性について,さらなる症例の蓄積が望まれる.
著者
坂東 政司 佐野 照拡
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.224-228, 2018-05-01

Point・わが国のIPFの治療ガイドライン2017では,「慢性安定期のIPF患者にピルフェニドンを投与することを提案する(推奨の強さ2,エビデンスの質B)」と記述されている.・これまでの臨床試験の結果から,ピルフェニドンは疾患進行の抑制(FVCの悪化抑制)のみならず,全死因死亡やIPF関連死亡のリスク低下をもたらす可能性がある.・ピルフェニドンの主な副作用は食欲減退,光線過敏性反応,悪心,腹部不快感である.・実臨床においては,ピルフェニドンの有効性と有害事象とのバランスを見極めながら治療開始・継続の是非を判断することが重要である.