著者
小宮山 謙一郎 増本 愛 西原 冬実 小林 威仁 杣 知行 萩原 弘一 金澤 實 永田 真
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1631-1641, 2013-12-30 (Released:2017-02-10)

【背景・目的】迅速IgE測定システムとして開発されたImmunoCAP^[○!R] Rapidを用いてアレルギー疾患患者の特異的IgE抗体を測定し,プリックテスト(SPT)と比較することでその有用性を検討した.【方法】2010年9月から2012年2月までにアレルギー疾患が疑われた患者83名を対象とした.患者背景は年齢中央値43歳で,喘息53例,アレルギー性鼻炎が42例であった.【結果】全アレルゲンの陽性率はImmunoCAP^[○!R] Rapidに比べSPTが高い陽性率(22.5% vs 26.5%, p<0.05)となったが,スギ抗原ではImmunoCAP^[○!R] Rapidが陽性率は同等であり(68.7% vs 55.4%, p=0.07), 鼻炎患者においては有意に高い陽性率(90.4% vs 71.4%, p<0.05)を示した. SPT陽性をベースにしたImmunoCAP^[○!R] Rapidの感度66.9%, 特異度93.4%, 陽性・陰性一致率86.4%であった.アレルゲン別に検討すると,スギとダニの各々の感度は93.5%, 73.8%, 特異度は62.2%, 92.7%と高値を示し,診断効率は86.4%, 83.1%と良好であった.また,IgEの判定結果と皮膚反応(紅斑,膨疹)の相関性もみられた(r=0.645, 0.657).【結語】SPTに比べImmunoCAP^[○!R] Rapidのアレルゲン同定率はやや劣るが,主要アレルゲンであるスギやダニ患者のアレルゲン同定には有用と考えられた.
著者
新井 直人 中山 雅之 新井 郷史 川﨑 樹里 花輪 幸太郎 黒崎 史朗 渡邊 真弥 間藤 尚子 坂東 政司 萩原 弘一
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.221-225, 2023-05-25 (Released:2023-06-13)
参考文献数
15

背景.肺末梢病変を呈する放線菌症は,気管支鏡検査で確定診断することが難しく,肺癌や肺結核との鑑別目的に外科的肺切除を必要とすることが少なくない.症例.47歳男性.咳嗽・血痰を主訴に受診した.胸部CTで右肺S1末梢に限局した浸潤影を認め,内部に気管支の拡張像を伴っていた.気管支鏡検査でガイドシース併用気管支腔内超音波断層法を用いて,病変から生検を複数回行い,嫌気培養の結果Actinomyces graevenitziiによる肺放線菌症と診断した.呼吸不全なく,6カ月間のアモキシシリン内服治療で陰影はわずかな瘢痕を残して消退し,その後再燃なく経過した.結論.内部に気管支拡張像を伴う肺末梢病変の鑑別に肺放線菌症が挙げられる.起因菌分離のための気管支鏡検査を施行する場合,病変内部で生検を複数回行い,さらに検体を嫌気培養に提出することが重要である.
著者
工藤 翔二 植竹 健司 萩原 弘一 平山 雅清 許 栄宏 木村 仁 杉山 幸比古
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.632-642, 1987-06-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
44
被引用文献数
9

たまたま経験した1症例の経験にもとついて, DPBにたいするエリスロマイシン (erythromycin base, erythromicin ethylsuccinate, 以下EM) の少量 (600mg), 長期 (6ヵ月以上) 投与を試みた. 18例のDPB (H. influenzae 16例, P. aeruginosa 2例) について, 平均19.8ヵ月の投与で, 全例に症状, 検査所見の改善を認めた. 労作時息切れ, 動脈血ガスの改善と寒冷凝集素価, IgM値の低下が, 3ヵ月以降比較的早期にみられ, 体重, 呼吸機能, 胸部X線所見の改善がそれに続いた. これらの改善は投与期間中持続した. 菌交代は1例をのぞいて認めなかった. 副作用として, GOT, GPTの軽度上昇がみられた (5例, 28%) が一過性であった. 投与終了9例について, その後平均11.6ヵ月間観察し, 4例に再然傾向を認めたが, うち2例は再投与にて改善, 全体として最終観察時に有意の悪化はみられなかった.本療法は, DPBの治療上きわめて有用であり, DPBを下気道の持続感染による特異な組織反応と考える立場から, EMの作用機序について考察した.
著者
山口 剛史 中込 一之 宇田川 清司 高久 洋太郎 佐藤 長人 杣 知行 萩原 弘一 金澤 實 永田 眞
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.657-664, 2009-06-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
19

【背景】局所麻酔薬に対する副反応は,しばしば,局所麻酔薬アレルギーと診断されているが,これらのほとんどは非アレルギー性の機序によることが明らかとなっている.【方法】局所麻酔薬に対する副作用の既往があり,歯科治療を予定している20名に対し,リドカインなどの局所麻酔薬に対する,皮膚テスト(プリックテスト,皮内テスト)及び漸増皮下注射で行うチャレンジ・テストにより,局所麻酔薬アレルギーの有無について評価した.【結果】17名(85%)で,リドカインに対する即時型アレルギー反応が陰性であった.これらの症例では,同薬による局所麻酔が可能となった.一方,3名(15%)ではリドカインに対して陽性反応を示した(プリックテストで1名,皮下注射で2名).【結語】局所麻酔薬アレルギーが疑われた患者における,局所麻酔薬に対する即時型反応の頻度は少ないが稀ではないと考えられる.従って,局所麻酔薬アレルギーを確認する診断アプローチは,臨床的に重要であり,今後はより多くの集団を対象に検討する必要があると思われる.
著者
萩原 弘一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.1036-1041, 2006-06-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
6

我々は, 効率的な疾患遺伝子同定法であるホモ接合指紋法 (homozygosity fingerprinting法) により, 肺胞微石症責任遺伝子を同定した. 責任遺伝子 (SLC34A2) はII型肺胞上皮細胞に発現するリンの運搬蛋白をコードしていた. 肺胞の表面は, リン脂質を主成分とする表面活性物質に覆われている. 古い表面活性物質は, 肺胞マクロファージによる消化後, II型肺胞上皮細胞上のSLC34A2により肺胞腔から除去される. 肺胞微石症では, SLC34A2機能喪失により, 肺胞腔内のリンイオン除去が障害された結果, 微石が生じると考えられる.
著者
萩原 弘一
出版者
埼玉医科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では、(1)薬剤性肺障害に関与する遺伝子が「」common disease-common variant-common origin仮説」に従い日本人に広がった。(2)特発性肺線維症急性増悪に関与する遺伝因子も「common disease-common variant-common origin仮説」に従い日本人に広がった、という作業仮説のもと、両者が同一である可能性、異なる可能性を共に考慮に入れながら、ホモ接合ハプロタイプを用いた全ゲノム関連解析」を始めとする各種解析手法により両者の遺伝子を特定する。両者の遺伝子が同一か否か、比較対照しながら平行して研究する。本年度は、検体収集を開始した。各協力施設から送られてくる加ヘパリン末梢血サンプルより有核細胞を分離し、EBウィルスとともに培養してリンパ芽球細胞株とし、常にDNAを継続採取出来るように準備するとともに末梢血より直接DNAを採取した。各検体に対して同様の処理を行った。薬剤性肺障害、特発性肺線維症急性増悪ともに80例程度の症例を収集することができた。また、アルゴリズムの開発も継続し、HH-GWAS法(投稿中)、HMonHH法(投稿準備中)を開発することができた。HMonHH法は、わずか2名の個人から疾患遺伝子の存在場所を推定する手法である。また一部全ゲノムSNP解析もAffymetrix社SNPアレイ6.0を使用し開始している。