著者
森田 公一 城野 洋一郎
出版者
長崎大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

本研究は現在アメリカなどで増加傾向にあるWest Nileウイルス(以下、西ナイルウイルス)感染症の効果的な予防法確立の基盤を確立するため、ヒト用ワクチンとしての組織培養ウイルスを用いた不活化ワクチンと動物用ワクチンとしてのリコンビナントワクチンを試験的に作製しその効果を検証することを目的としている。ウイルス材料として米国のニューヨークで分離された西ナイルウイルス株(NY99-35262-11)を日本脳炎組織培養ワクチン製造に用いられるVero細胞プラットフォームを用いて大量培養を行った結果、10^9PFU/ml以上という高いウイルス価が得られた。このウイルス原液を日本脳炎ウイルスワクチン製造方法と同様の精製、ホルマリンによる不活化方法により、ヒト用の日本脳炎ウイルスと同程度の純度(1Dose当たり1ng以下の宿主DNAの混入など)をもった試作ワクチンを試作した。マウスを用いた免疫試験をにおいてはワクチン未接種群は全て脳炎を発症して死亡したが、ワクチン接種群は全てが生残し、本ワクチンの有効性が証明された。また動物用のリコンビナントウイルス作製については同じくNY99-35262-11株のPrM-E遺伝子領域をクローン化し、現在日本脳炎動物用ワクチン株ML17株とキメラcDNAを構築が完了した。今後、不活化ワクチンについてはヒトでの安全性試験と有効性確認試験が必要であり、動物用ワクチンについてはキメラウイルスの回収が必要となる。