著者
久保 亨 森内 浩幸 西村 秀一 森田 公一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

肺炎は現在本邦での死因の第3位であり増加傾向にある。肺炎の治療において起因病原体の迅速な確定診断と薬剤耐性の有無の検索は非常に重要である。我々は、簡便で迅速な遺伝子増幅検査法であるリアルタイムPCR法を用いた結核およびその他の肺炎の簡易迅速確定診断・薬剤耐性判定システムの構築を行い、実臨床における有用性を示し、その地域医療への応用を行っている。この系を用いれば、より迅速に低コストで肺炎の鑑別診断と薬剤耐性の有無の推定が可能となり、地域の高齢化・医療過疎化の中でのより効率的な結核・呼吸器疾患コントロール対策モデル作りに繋がると考えられる。
著者
大石 和徳 山領 豪 森田 公一 井上 真吾 熊取 厚志
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

フィリピン、マニラ市において78例のデングウイルス二次感染症患者(DF40症例、DHF38症例)の急性期と回復期の末梢血血小板数とPAIgGおよびPAIgMを測定し、血小板数のみならず重症度との相関を検討した。急性期に血小板数は減少するのに対し、PAIgG,PAIgMは増加し、それぞれは血小板数と有意な逆相関を示した。また、PAIgMの増加はDHF進展と有意に相関することが判明した。一方、急性期患者の末梢血血小板の溶出液中には健常者と比較して高い抗デングウイルス活性を検出した。デングウイルス二次感染症において、抗デングウイルス結合活性を有する血小板に付随した免疫グロブリンはその血小板減少機序と重症度に重要な役割を果たすことが推察された。また、血漿中thrombopoetin(TPO)は急性期に増加することから、デングウイルス二次感染症において、デングウイルス感染に伴う巨核球減少が関与することが示唆された。次に、顕著な血小板減少を伴うデングウイルス感染症患者34例(DF18例、DHF16例)を対象として、高用量静注用ヒト免疫グロブリン(IVIG)を0.49/kg/日を3日間投与し、血小板減少の進行阻止あるいは回復促進効果が認められるか否かを前向き比較試験として実施した。入院直後にウイルス学的診断の確定した34症例を封筒法により無作為にA群(IVIG投与+輸液療法)17例、B群(輸液療法のみ)17例の2群に分類した。2群の性別、年齢(平均15歳)、重症度、末梢血血小板数に有意差は認められなかった。A群において、IVIG投与に伴う明らかな副反応は認められなかった。これらの結果から、急性デングウイルス感染症は、ITPとは異なり網内系細胞のFcレセプターを介した血小板クリアランスは主要な血小板減少機序でないことが示唆された。さらに、分化したTHP-1細胞を用いてin vitroの血小板貪食能測定法をフローサイトメトリーを用いて確立した。
著者
森田 公一
出版者
日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.11, pp.2328-2333, 2004-11-10
参考文献数
5

熱帯性の蚊媒介性ウイルスであるウエストナイルウイルス(西ナイルウイルス)が1999年,米国に侵入し現在,北米・中米へと拡大を続けて多くの患者が発生している.本年度はカリフォルニア州でもすでに多くの患者発生が見られ,日本へ侵入する可能性があり警戒が必要である.わが国へ侵入した場合には日本脳炎との鑑別が重要である.
著者
森田 公一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.11, pp.2328-2333, 2004-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

熱帯性の蚊媒介性ウイルスであるウエストナイルウイルス(西ナイルウイルス)が1999年,米国に侵入し現在,北米・中米へと拡大を続けて多くの患者が発生している.本年度はカリフォルニア州でもすでに多くの患者発生が見られ,日本へ侵入する可能性があり警戒が必要である.わが国へ侵入した場合には日本脳炎との鑑別が重要である.
著者
西條 政幸 森田 公一
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.89-94, 2015-06-25 (Released:2016-02-27)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

日本ではエボラウイルス等バイオセーフティレベル4(BSL-4)に分類される病原体を取り扱うことはできない.1981年に国立感染症研究所は世界に先駆けてグローブボックス型のBSL-4施設を建設したが,30年以上が経過している現時点においてBSL-4施設として稼働されていない.2014-15年にかけて西アフリカにおいて過去にない大きな規模のエボラウイルス病(EVD)が流行している.また,致死率の極めて高い新興ウイルス感染症が世界各地で発生している.このような致死率の高い感染症対策に貢献するための研究がなされている中で,日本においては稼働しているBSL-4施設がないことから,感染性のあるBSL-4病原体を取り扱うことができず,公衆衛生対応や研究領域において十分な力を発揮できていない.多くの高病原性ウイルス感染症の病原体は動物由来ウイルスであり,地球上から根絶させることはできず,これからも流行が続くことが予想される.日本においてもBSL-4施設を用いて,BSL-4病原体による感染症対策のための研究や検査が実施できる体制を整備する必要がある.
著者
高島 郁夫 苅和 宏明 森田 公一 只野 昌之 竹上 勉 江下 優樹 水谷 哲也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究において、日本に存在しているかまたは侵入の可能性のあるフラビウイルス感染症の流行予防のための診断法の開発、病原性の解明および蚊の調査に関する研究を実施して以下の成果を得た。1.診断法の開発1)ウエストナイル熱について、RT-PCR RFLP法、リアルタイムPCR法およびRT-LAMP法による遣伝子診断法を開発した。この方法によると簡便な設備により、ウエストナイルウイルスと日本脳炎ウイルスおよびウエストナイルウイルス株間の簡別診断が可能となった。2)ダニ媒介性脳炎の迅速な血清診断法として、ウイルス株粒子を用いたヒト用のIgGおよびIgM-ELISA法を開発した。2.病原性の解明1)ウエストナイルウイルスの神経侵襲性毒力がウイルスエンベロープ蛋白への糖鎖付加により決定されることを明らかにした。2)ダニ媒介性脳炎ウイルスの神経侵襲性毒力は、ウイルスエンベロープ蛋白の1個のアミノ酸の置換により電荷が陽性に変化することにより低下することが示された。3)ダニ媒介性脳炎ウイルスの感染性cDNAクローンを用いた解析により、NS5とエンベロープ蛋白における各々一ヶ所のアミノ酸変異が神経毒力の低下に相乗的に作用していることが示唆された。3.蚊の調査1)ウエストナイルウイルスに対する、日本産蚊4種アカイエカ、イナトミシオカ、ヒトスジシマカの感受性、およびアカイエカの媒介能を証明した。2)ウエストナイルウイルス・デングウイルス媒介蚊ヒトスジシマカのJNKタンパクの機能を解析した。

1 0 0 0 デング熱

著者
森田 公一
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物
巻号頁・発行日
vol.53, 2002
著者
森田 公一 城野 洋一郎
出版者
長崎大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

本研究は現在アメリカなどで増加傾向にあるWest Nileウイルス(以下、西ナイルウイルス)感染症の効果的な予防法確立の基盤を確立するため、ヒト用ワクチンとしての組織培養ウイルスを用いた不活化ワクチンと動物用ワクチンとしてのリコンビナントワクチンを試験的に作製しその効果を検証することを目的としている。ウイルス材料として米国のニューヨークで分離された西ナイルウイルス株(NY99-35262-11)を日本脳炎組織培養ワクチン製造に用いられるVero細胞プラットフォームを用いて大量培養を行った結果、10^9PFU/ml以上という高いウイルス価が得られた。このウイルス原液を日本脳炎ウイルスワクチン製造方法と同様の精製、ホルマリンによる不活化方法により、ヒト用の日本脳炎ウイルスと同程度の純度(1Dose当たり1ng以下の宿主DNAの混入など)をもった試作ワクチンを試作した。マウスを用いた免疫試験をにおいてはワクチン未接種群は全て脳炎を発症して死亡したが、ワクチン接種群は全てが生残し、本ワクチンの有効性が証明された。また動物用のリコンビナントウイルス作製については同じくNY99-35262-11株のPrM-E遺伝子領域をクローン化し、現在日本脳炎動物用ワクチン株ML17株とキメラcDNAを構築が完了した。今後、不活化ワクチンについてはヒトでの安全性試験と有効性確認試験が必要であり、動物用ワクチンについてはキメラウイルスの回収が必要となる。