著者
寺田 昭彦 堀 知行 久保田 健吾 栗栖 太 春日 郁朗 金田一 智規 伊藤 司
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.91-105, 2022 (Released:2022-05-10)
参考文献数
119

近年の超高速シーケンサー技術, 顕微鏡, 質量分析装置の開発のスピードは目覚ましいものがあり, 純然たる環境微生物学や微生物生態学を専門としない工学系研究者でも複合微生物系の機能や活性の解明といった, 微生物群集の高度な生理生態解析が行えるようになっている。このような潮流により, 水処理施設に潜む新奇微生物の存在や, 新機能の発見が進んでいる。本総説では, 水処理施設や自然環境の水質変換に関与する微生物の遺伝子, 細胞, 活性, 代謝物を高解像度に診る最新手法の紹介を行う。さらに, 手法の導入によってもたらされた水処理施設に存在する微生物群の生理生態に関する最新知見と今後の水処理技術の進展に向けた微生物生態研究の展望について概説する。
著者
堀 知行
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

近年、実環境での微生物代謝生理を決定する同位体追跡技術の進展・適用により、陸上地下圏においてメタンの産生抑制や分解に関与する微生物の存在が明らかになってきている。本研究では、嫌気土壌圏メタンフラックスに中心的に関わる未知細菌群を分子生態学的手法によって探索し、さらに分離培養することを目的とした。まず初めに、分離培養の微生物接種源である美唄湿原土壌の分子生態解析を行った。pmoA,mcrA,16S rRNA遺伝子のクローンライブラリ解析の結果、美唄湿原ではType Iメタン酸化細菌やFen clusterに分類される新規なメタン生成古細菌群が優占化していることが明らかとなった。現在、水素資化性メタン生成菌の基質競合細菌(還元的酢酸生成菌)に関する生態学的知見を得ることを目的として、アセチルCoA経路の鍵酵素遺伝子,fhsを標的としたクローン解析を進めている。また酢酸資化性メタン生成菌と基質競合する鉄還元細菌を分離培養すべく、難分解性の結晶性酸化鉄(GoethiteやHematiteなど)を電子受容体とした集積培養実験を開始した。しかし、これまでのところ新規な鉄還元細菌の純粋分離には至っていない。さらに嫌気環境のメタン動態に直接的に関与する嫌気メタン酸化微生物の取得を目指したバイオリアクターを考案・設計した。今後は、本連続培養システムを用いて目的微生物群の集積培養を行う予定である。