著者
西岡 清 向井 秀樹 上村 仁夫 堀内 保宏 伊藤 篤 野口 俊彦 西山 茂夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.98, no.9, pp.873, 1988 (Released:2014-08-08)

重症成人型アトピー性皮膚炎患者64例にアンケートならびに面接調査を行い以下の結果を得た.①39.1%の症例が生後6ヵ月以内,28.1%が1~4歳に発症し,10歳迄に発症した症例は75%であった.②アトピー背景として2親等内に本症の発生あるいは気道アレルギーの発生の両者あるいはその一方を病歴に持つ症例が86.7%にみられた.③いずれの症例も教科書的皮膚症状の分布を示しながら全身への皮膚症状の拡大を示し,93.8%の症例が思春期もしくは成人期に全身への皮膚症状の拡大を示した.④1例を除いて血中IgE値は200U/ml以上を示し,気道アレルギーを合併する症例では血中IgE値がより高値を示す傾向がみられた.気道アレルギーを合併しない症例の血中IgE値は,皮膚症状罹患後10年を経て著明な高値を示す傾向がみられた.ダニ抗原に対するRASTも血中IgE値同様,本症罹患10年以上の症例に高スコアーがみられた.⑤18.8%の症例に発症後寛解期間が見られ,これらはいずれも5歳以前の発症者であった.これらの症例では気道アレルギーを合併するか血中IgE高値がみられた.以上より,重症成人型アトピー性皮膚炎患者は一般の本症患者に比しアトピー背景が強く,また,IgE産生機構の昻進が著明で,アトピー性皮膚炎全体の中で1つのサブグループとして解析されるべき集団であると考えられた.