著者
向井 秀樹 新井 達 浅井 寿子 武村 俊之 加藤 一郎
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.84-90, 1995-02-01
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

小児のアトピー性皮膚炎の治療に海水浴療法が行われており, その作用機序として紫外線および海水の作用が考えられている。そこで今回この海水の作用に注目して, その有用性を検討した。方法は自宅の入浴時に海水成分に近い自然塩を用いて塩水療法を行った。対象は, 従来の治療法に抵抗性で重症度の高い46症例(小児17例, 成人29例)。全体の有効率は60.9%であり, 年齢別にみると小児94.1%, 成人41.3%と明らかな有効率の違いをみた。臨床効果を要約すると, 止痒効果が高く, 湿潤局面の改善や保湿効果などが認められた。副作用として, 使用時の刺激感および長期連用により乾燥肌の出現がみられた。比較的かゆみのコントロールしにくい症例に対して, 本療法は容易で有用性の高い補助療法になりうると考えた。
著者
向井 秀樹 新井 達 浅井 寿子 武村 俊之 加藤 一郎
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.84-90, 1995-02-01 (Released:2011-07-20)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

小児のアトピー性皮膚炎の治療に海水浴療法が行われており, その作用機序として紫外線および海水の作用が考えられている。そこで今回この海水の作用に注目して, その有用性を検討した。方法は自宅の入浴時に海水成分に近い自然塩を用いて塩水療法を行った。対象は, 従来の治療法に抵抗性で重症度の高い46症例(小児17例, 成人29例)。全体の有効率は60.9%であり, 年齢別にみると小児94.1%, 成人41.3%と明らかな有効率の違いをみた。臨床効果を要約すると, 止痒効果が高く, 湿潤局面の改善や保湿効果などが認められた。副作用として, 使用時の刺激感および長期連用により乾燥肌の出現がみられた。比較的かゆみのコントロールしにくい症例に対して, 本療法は容易で有用性の高い補助療法になりうると考えた。
著者
福田 英嗣 鈴木 琢 早乙女 敦子 早出 恵里 向井 秀樹
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.2, pp.133-141, 2013

成人アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis:AD)の入院療法における病勢マーカーについて検討した.対象は当院皮膚科に2009年3月から2010年1月までに,急性増悪ないし重症例のため入院加療した成人AD 26名である.年齢は17~48歳(平均値±SD:28.7±8.0歳),性別は男性10名,女性16名で,入院期間は7~25日(13.0±3.5日)である.方法は,入院時(第2病日)と退院時の早朝(7時~8時)に血清コルチゾール値,血漿adrenocorticotropic hormone(ACTH)値,血清thymus andactivation-regulated chemokine(TARC)値,血清lactate dehydrogenase(LDH)値,末梢血好酸球数を測定し,比較検討した.さらに,日本皮膚科学会(日皮会)AD重症度分類,痒みのVisual analoguescale(VAS)値,Skindex-16,Dermatology Life Quality Index(DLQI)に関しても比較検討した.結果は,入院時に低値を示した血清コルチゾール値と血漿ACTH値はともに有意な増加を示し,入院時に高値を示した血清TARC値や血清LDH値は有意に減少した.一方,末梢血好酸球数は減少するも有意差を認めなかった.また,日皮会AD重症度分類,Skindex-16,DLQIおよび痒みのVAS値は有意に減少した.今回の検討で,2週間程の短期入院における血中病勢マーカーは血清コルチゾール値,血漿ACTH値,血清TARC値,血清LDH値が有用であった.これらの中で,血清TARC値は全例において入院時から退院時に減少し,測定幅を考慮すると,血清TARC値が重症度と改善度の評価を最も反映するマーカーと考えた.その他のマーカーとして日皮会AD重症度分類,Skindex-16,痒みのVAS値およびDLQIが有用であった.
著者
平松 正浩 清野 みき 長瀬 彰夫 新井 達 向井 秀樹
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.346-349, 1998-06-01 (Released:2010-10-15)
参考文献数
14
被引用文献数
2

難治性または重症のアトピー性皮膚炎患者の治療法として我々は塩水療法をおこなってきたが, これらの使用経験から本療法に止痒効果が期待できた。そこで, この止痒効果の有無を確認する目的で, 同程度の皮疹を有する前腕部を用いて, 塩水と真水で左右比較試験をおこなった。痒みの評価にはvisual analogue scale method(VAS法)を用いた。10段階評価でおこなった治療前の痒みのスコアは5.05±1.53に対し, 治療4週後のスコアは塩水側が2.79±2.35, 真水側が3.90±2.20であった。両者とも治療前に比べ統計学的に有意にスコアは低下したが, 両者間には2週, 4週目ともに明らかな有意差が認められた。さらに本療法は臨床像から急性期の発疹に効果が高く, 慢性化した病巣ほど有効率が低下する傾向がみられた。以上の結果から本療法は洗浄効果に加え止痒効果が期待でき, 痒みのコントロールしにくい急性期の発疹に対して補助療法として試みる価値があると考えた。
著者
福田 英嗣 鈴木 琢 佐藤 八千代 猿谷 佳奈子 向井 秀樹
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.11, pp.2195-2201, 2010-10-20 (Released:2014-11-28)

重症なアトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis:AD)患者の入院治療は,短期間に皮膚症状を改善する有用な治療法である.しかし,入院中に使用される比較的多くの量のステロイド外用薬が生体に及ぼす影響については明らかではない.今回われわれはADの入院患者において,入院時(検査は入院翌日)および退院時の血中コルチゾール値を測定し,その推移について検討を行った.対象は,当院皮膚科に2007年5月から2008年8月までに入院加療した重症度の高いAD患者である.11歳から43歳(平均値±SD:27.4±7.5歳)の20名(男性12名,女性8名)に,入院時および退院時の朝7時から8時の間に血中コルチゾール値を測定した.結果は入院時の血中コルチゾール値は3.7±5.7 μg/dl(平均値±SD)と低下を示していたが,退院時は11.6±4.4 μg/dlと上昇した.この推移には統計上有意差を認めた(p<0.05).また,入院期間は13.3±4.7日(平均値±SD)であり,血中コルチゾール値が基準値である4.0 μg/dlに復するのに必要な入院期間は平均4.8日(推定)であった.入院中に使用したステロイド外用量はII群が8.6±6.3 g/日(平均値±SD),III群が4.8±5.8 g/日であり,ステロイド外用薬の使用量と血中コルチゾール値の変化量には差がなかった.今回の検討で, 入院を要する重症AD患者では,入院時には副腎皮質機能が抑制されているケースが多く,入院治療を行うことにより皮膚症状の改善が認められ,さらに入院時に基準値より低かった16症例のうち1例を除き退院時には基準値以上になり副腎皮質機能が正常に回復することが示された.重症AD患者においての入院療法は,短期間で効率的に皮膚状態を改善させるのみでなく,抑制状態にある内分泌系機能も同時に回復させることが示された.
著者
福田 英嗣 向井 秀樹
出版者
Japan Organization of Clinical Dermatologists
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.181-186, 2015
被引用文献数
1

ダーモスコピーは診療の様々な場面で使用され,特に悪性黒色腫や基底細胞癌,色素性母斑,脂漏性角化症などの色素性皮膚病変での有用性は確立している.今回,日常診療でしばしば遭遇する色素性皮膚病変以外の疾患(疥癬や伝染性軟属腫,尋常性疣贅)での所見や,尋常性疣贅の治療経過,皮脂欠乏症における乾燥症状の観察での活用法について報告した.疥癬は,痂皮などの直接鏡検にてヒゼンダニを確認した場合に確定診断出来るが,「疥癬診療ガイドライン」では,ダーモスコピーでヒゼンダニを確認した場合も疥癬と診断出来ると記載されている.疥癬のダーモスコピー所見は,ヒゼンダニの虫体を反映する灰褐色三角形構造(gray delta structures),疥癬トンネルを反映する飛行機雲様所見(jet with contrail),その他,水尾所見(wake)がある.伝染性軟属腫は視診で診断可能な場合が多いが,小型の病変やアトピー性皮膚炎に合併するwhite fibrous papulosis of the neckでは時に診断に苦慮する.伝染性軟属腫のダーモスコピー所見は,内部は白色調で,中央にリング状の鱗屑があり,その周囲に毛細血管拡張(crown vessels)を認める.尋常性疣贅では,小型の病変の確認や治療経過の観察時にダーモスコピーは有用であり,肉眼で判別困難な角化やdotted vesselsの有無を確認出来る.皮脂欠乏症患者では,肉眼的に皮膚の乾燥を確認できれば保湿外用薬の外用を行うが,確認できない場合には外用の中断がしばしばみられる.そのような患者の場合,ダーモスコピーは乾燥状態の程度を診察時に示すことができるため,保湿外用薬の外用アドヒアランスを高める一つのツールとしても有用である.
著者
西岡 清 向井 秀樹 上村 仁夫 堀内 保宏 伊藤 篤 野口 俊彦 西山 茂夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.98, no.9, pp.873, 1988 (Released:2014-08-08)

重症成人型アトピー性皮膚炎患者64例にアンケートならびに面接調査を行い以下の結果を得た.①39.1%の症例が生後6ヵ月以内,28.1%が1~4歳に発症し,10歳迄に発症した症例は75%であった.②アトピー背景として2親等内に本症の発生あるいは気道アレルギーの発生の両者あるいはその一方を病歴に持つ症例が86.7%にみられた.③いずれの症例も教科書的皮膚症状の分布を示しながら全身への皮膚症状の拡大を示し,93.8%の症例が思春期もしくは成人期に全身への皮膚症状の拡大を示した.④1例を除いて血中IgE値は200U/ml以上を示し,気道アレルギーを合併する症例では血中IgE値がより高値を示す傾向がみられた.気道アレルギーを合併しない症例の血中IgE値は,皮膚症状罹患後10年を経て著明な高値を示す傾向がみられた.ダニ抗原に対するRASTも血中IgE値同様,本症罹患10年以上の症例に高スコアーがみられた.⑤18.8%の症例に発症後寛解期間が見られ,これらはいずれも5歳以前の発症者であった.これらの症例では気道アレルギーを合併するか血中IgE高値がみられた.以上より,重症成人型アトピー性皮膚炎患者は一般の本症患者に比しアトピー背景が強く,また,IgE産生機構の昻進が著明で,アトピー性皮膚炎全体の中で1つのサブグループとして解析されるべき集団であると考えられた.