著者
堀内 善信 戸田 眞佐子 大久保 幸枝 原 征彦 島村 忠勝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.599-605, 1992-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
20
被引用文献数
7 8

茶およびカテキンの百日咳に対する感染防御の可能性を, 百日咳菌に対する殺菌活性, 菌の培養細胞への付着に対する抑制作用および百日咳毒素のリンパ球増多 (Lymphocytosis promoting, LP) 活性に対する不活化作用を指標として検討した.殺菌活性については, いずれも濃度依存的であり, 緑茶, 紅茶およびコーヒーは, それぞれ常用飲用濃度 (5%) で, 百日咳菌に対して強い殺菌活性を示した.プアール茶も比較的弱いながら殺菌活性を示した. (-) エピガロカテキンガレート (EGCg) およびテアフラビンジガレート (TF3) の殺菌活性は強く, 1mg/mlで24時間以内に百日咳菌を完全に殺菌した.HeLa細胞およびCHO細胞への百日咳菌の付着能に対する抑制作用を検討したところ, EGCgやTF3は全く抑制を示さなかった.これに対し, 緑茶および紅茶は, 培養細胞への菌の付着を強く抑制した.百日咳毒素のLP活性不活化作用は, 細胞への百日咳菌の付着抑制とは逆で, 1%で緑茶が全く作用を示さず, また紅茶でもわずかな不活化作用しか示さなかった.一方, EGCgおよびTF3は100μg/mlで強い不活化作用を示し, なかでもTF3の不活化作用は顕著であった.以上の結果から茶, EGCgおよびTF3には百日咳防御に関して, 興味ある活性のあることが示された.