- 著者
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堀口 萬吉
- 出版者
- 地学団体研究会
- 雑誌
- 地球科学 (ISSN:03666611)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.1, pp.40-50, 1997
- 参考文献数
- 32
- 被引用文献数
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関東平野を横断する利根川に沿って,低地が広く発達している.この発達は関東造盆地運動によると云われている.最近,この地域の考古遺跡発掘調査あるいは低地における大規模な土木工事などにより.表層とくに浅い地層の観察・検討が行われるようになってきた.その結果,この地域の新しい歴史時代の地殻変動あるいは地質環境変遷の具体的な事象が明らかになりつつある.利根川中流低地下流側の加須低地では,古い台地地形が地下に埋没しており,「埋没台地」と呼ばれ,特異な低地地形を作っている.この台地の埋没は,古墳時代以降約3mに及んでおり,加須低地における新しい時代の沈降運動は,大きなものであることを示している.また,上流側の妻沼低地では,9世紀(弘仁9年,818)に生じた「古代地震」の液状化による「地下の割れ目系」およびそれを充填する「噴砂・脈状砂」が各所で発見されている.これらの結果をまとめると,古代地震の液状化現象は,深谷市付近の規模が大きく周辺の地域にその規模を小さくしている状況がよく示される.さらに,赤城山南麓において,広域的な山地の崩壊と土石流による遺跡の埋積が報じられている.これらの調査から,利根川中流地域における「古代地震」は,大規模な地変を引き起こしたことがうかがえる.