著者
小池 宙 堀場 裕子 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.281-286, 2018 (Released:2019-02-27)
参考文献数
20

[緒言]芎帰調血飲は『万病回春』に記載された産後一切の諸病に対して有効とされる方剤である。今回,流産後に出現し3年間持続していた全般性不安障害に対して芎帰調血飲が有効だった症例を経験したので報告する。[症例]39歳女性。生来明るい性格だったが36歳流産後より全般性不安障害を発症し人混みに留まることができなくなった。その後も不安が持続していたため漢方外来を受診した。[経過]抑肝散加陳皮半夏を約半年間内服するも症状持続したため芎帰調血飲に変更した後,精神状態が安定し日常生活の苦痛が大幅に軽減した。[考察]芎帰調血飲は『万病回春』に産後の治療薬の第一の方剤として挙げられ様々な加減での使用方法が記載されている。今回は流産以降3年間持続していた精神症状であったが芎帰調血飲に良好な反応を示した。産後に出現した症状の治療には芎帰調血飲も選択肢の一つとして検討するべきと考えられた。
著者
堀場 裕子 吉野 鉄大 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.298-301, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
15

月経困難症の漢方治療では,駆瘀血剤が処方されることが多く,大柴胡湯が第一選択になることは少ない。今回,月経困難症に大柴胡湯単独で奏効した2例を報告する。症例1は19歳,大学入学後から月経痛が悪化し,市販の鎮痛剤が無効であり,頭痛や嘔吐のため講義に出席できないこともあった。腹力充実,腹部膨満,胸脇苦満,左右臍傍の圧痛を認め,実証,熱証,気うつ証・瘀血証とした。大柴胡湯エキス内服4週後には月経前の頭痛や嘔気が軽減し,20週後には月経痛に対する鎮痛剤が不要となった。症例2は35歳,息子の進学問題と転居を契機に月経痛や頭痛,いらいらが出現した。腹力やや充実,腹部膨満,胸脇苦満,心下痞鞕,左右臍傍の圧痛を認め,実証,熱証,気うつ証・瘀血証とした。大柴胡湯エキス内服8週後には頭痛やイライラが消失し,20週後には月経痛は気にならなくなった。2例とも大柴胡湯にて「気うつ」が消失し,月経痛が改善した。
著者
小池 宙 堀場 裕子 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.178-183, 2016 (Released:2016-08-18)
参考文献数
31
被引用文献数
1

はじめに:抑肝散加芍薬厚朴に良好な反応を示した不随意運動を有した1例を経験したので報告する。症例:17歳の男性。6年前から突然体が反り返るような痙攣様の不随意運動を認めていた。精神科・神経内科等を受診し加療を受けるも改善を認めていなかったため,漢方治療を希望し受診した。抑肝散加芍薬厚朴を煎剤にて開始したところ不随意運動は徐々に軽減した。考察:抑肝散は明代の薛已の創方とされる。江戸時代に日本に伝えられ,様々な加味方も使用された。大塚敬節は先人の加味方を基礎に抑肝散加芍薬厚朴を考案し使用した。抑肝散加芍薬厚朴はエキス剤にないため昨今では使用される機会は多くないが,本例のように有効な緊張興奮を伴う症例には有効である。抑肝散との使い分けについては今後さらに研究が必要であると考えられる。