著者
堀場 裕子 吉野 鉄大 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.298-301, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
15

月経困難症の漢方治療では,駆瘀血剤が処方されることが多く,大柴胡湯が第一選択になることは少ない。今回,月経困難症に大柴胡湯単独で奏効した2例を報告する。症例1は19歳,大学入学後から月経痛が悪化し,市販の鎮痛剤が無効であり,頭痛や嘔吐のため講義に出席できないこともあった。腹力充実,腹部膨満,胸脇苦満,左右臍傍の圧痛を認め,実証,熱証,気うつ証・瘀血証とした。大柴胡湯エキス内服4週後には月経前の頭痛や嘔気が軽減し,20週後には月経痛に対する鎮痛剤が不要となった。症例2は35歳,息子の進学問題と転居を契機に月経痛や頭痛,いらいらが出現した。腹力やや充実,腹部膨満,胸脇苦満,心下痞鞕,左右臍傍の圧痛を認め,実証,熱証,気うつ証・瘀血証とした。大柴胡湯エキス内服8週後には頭痛やイライラが消失し,20週後には月経痛は気にならなくなった。2例とも大柴胡湯にて「気うつ」が消失し,月経痛が改善した。
著者
沢井 かおり 吉野 鉄大 大岸 美和子 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.235-238, 2021 (Released:2022-08-12)
参考文献数
8

漢方治療では,異なる病状の症例でも漢方的病態が同じであれば同一処方が有効であり,これを異病同治と称する。特に家族では,遺伝的素因や生活環境の共通性から漢方的病態が類似しやすい。今回,不登校の孫と易疲労の祖母に対する異病同治の症例を経験したので報告する。症例1(孫)は13歳女性,主訴は不登校である。やや実証,寒熱中間証,気逆,気滞,血虚と診断して柴胡加竜骨牡蛎湯を処方したところ,次第に登校できるようになり,集中力がついて成績もよくなった。症例2(祖母)は73歳女性,主訴は易疲労である。虚実中間証,寒熱中間証,気滞,気虚と診断して柴胡加竜骨牡蛎湯を処方したところ,体調がよくなり元気になった。不登校の孫と易疲労の祖母に対して,柴胡加竜骨牡蛎湯がいずれも奏効した。これは血縁であるということと,家庭内のトラブルという背景の一致によって,漢方的病態が似ていたためと思われた。
著者
吉野 鉄大
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.772-774, 2020-12-01

症例75歳の男性。2型糖尿病で治療中。数日前からの発熱,湿性咳嗽,呼吸困難で受診し,胸部X線で浸潤影を認めたため,肺炎の診断で入院加療となった。入院後,食事中のむせ込みや食後の酸素化不良がみられたため,しばらく絶食管理の方針となった。 この患者の血糖コントロールのために,経口血糖降下薬を中止してインスリンのスライディングスケール単独で経過をみるのはどうか?