著者
堀岡 喜美子
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
no.48, pp.127-143, 2020-03-01

柳田國男が「巫女考」において巫女を「神社ミコ」と「口寄ミコ」に分類して以来、多くの先人によって膨大といえる巫女の研究が成されてきた。しかしながら「「巫女」とは何か」についての論究は乏しく、神話世界の女神なども「巫女」とみなし、現実社会に生きた巫女の本質を曖昧にしてしまう傾向が見られる。史料上、古代律令社会には「巫女」の語はほぼ認められず、十二世紀初頭より祭礼神幸記録に巫女が現出してくる。これらの記録を手掛かりに「巫女」の実像を探求した結果、「巫女」とは院政期において、宮廷神事の神社移行に伴い誕生した呪術的女性祭祀者であり、宮廷女性祭祀者である御巫の代理的存在である可能性を見出した。また、祭礼神幸における巫女の役割は呪術性と美麗な様相をもって、祭礼神幸が内包する民衆騒擾を抑制し、かつ、神幸のカタルシス役割を高めるものであったと考えられる。祭礼神幸巫女の現出宮廷祭祀御巫白河院
著者
堀岡 喜美子
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
no.49, pp.99-115, 2021-03-31

日本の歴史上、神仏や霊との意思伝達者(託宣者)はミコと称されその多くが女性である。柳田國男はその理由を古代からの「女性の特性」にあると説いている(「ミコ女性論」)。しかし、古代からの史料を概観すると、女性が「託宣者」として「特化」するのは摂関期であると推定される。摂関政治隆盛期の公卿藤原実資の日記『小右記』に記された託宣者を検証したところ、その特性は女性による直接言語によるものと判明した。なぜ、摂関期に託宣者が女性に特化されたのか、当時の貴族女性が置かれた状況を社会史、精神医学から検証した。結果、女性の苦難、葛藤からの脱却手段として現れる憑依現象が、託宣者として認識された可能性を導き出した。「ミコ女性論」摂関政治女性の苦悩直接言語託宣者憑依現象
著者
堀岡 喜美子
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.153-169, 2017-03-01

中世祇園社片羽屋神子については脇田晴子氏により一定明らかにされている。すなわち宮籠、片羽屋(座・衆)とも称され祇園社に下級の役人として神楽や夫役に奉じた男女混合の組織であった。しかしながら、なぜ宮籠組織が片羽屋や片羽屋神子と称されるのかは判然とせず、男神子の職掌についても不明な点が多い。また、丹生谷哲一氏は職掌より宮籠・片羽屋神子は散所非人と位置付けている。本稿はこうした片羽屋神子に関する研究の到達と課題を踏まえ、祇園社関係文書を再考することにより神子組織編制の過程、および職掌について検証した。この結果、「神子」号は宮籠組織が自ら獲得したと思われ、また宮籠・片羽屋神子は散所非人ではないが、下級の呪術的芸能者集団(1)と位置付けられることが明らかになった。祇園社宮籠片羽屋神子散所非人呪術的芸能者