著者
飯田 文子 堀江 かほり 西村 敏英
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.3-12, 2014 (Released:2015-01-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本研究は,ホルスタイン種牛肉のロースを異なる加熱方法,すなわち焼成と蒸し焼き,煮熟,真空低温,マイクロ波の各方法で,内部中心温度60度に達するまで加熱した後,ロース芯を用いて官能評価と機器測定により食感および味の違いを検討した.ロース芯の加熱損失は,焼成,蒸し焼き加熱で最も小さく,マイクロ波で最も大きかった.調理後の肉の水分含量は真空低温加熱で最も多く,マイクロ波で最も少なかった.調理後の脂質含量は,真空低温で加熱した肉で低い値を示した.破断測定における破断エネルギーはマイクロ波加熱で高値であった.調理後の総アミノ酸含量は真空低温加熱で調理された肉において,最も高い値を示した.官能評価では,焼成および蒸し焼き加熱の肉で多汁性が高く,香りが良く,うま味も強いと評価された.真空低温加熱の肉はやわらかく,うま味が強いが,香りが良くないと評価された.マイクロ波加熱はどの項目においても低い評価値を示した. 以上の結果から,異なる加熱方法によるホルスタイン種牛のロース芯の官能評価特性の差異は,加熱損失,水分含量,うま味成分含量並びに破断エネルギーの差によってもたらされることが明らかとなった.