著者
西村 敏英 江草 愛
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.167-176, 2012
参考文献数
17
被引用文献数
2

「こく」は、昔からラーメン、カレー、シチュー、味噌などの食べ物に使われており、おいしい食べ物を表現する言葉としてよく使われている。最近では、キムチ、ヨーグルト、紅茶、ビール、調味料などの商品名にも「こく」という言葉が使われるようになってきた。しかし、「こく」に対する明確な定義はされていない。本稿では、「こく」の定義を提案すると同時に、「こく」付与物質の特性から、「こく」付与物質を分類することを試みた。また、最近、我々は、タマネギ由来の物質に「こく」を付与する効果を見出したので、この物質の特性並びにその「こく」付与効果を紹介する。
著者
西村 敏英
出版者
日本脂質栄養学会
雑誌
脂質栄養学 (ISSN:13434594)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.14-25, 2021 (Released:2021-06-06)

Lipids in foods play important roles in the improvement of their palatability as well as the supply of nutrition for energy. Lipids improve the food property which is decided by lots of factors such as taste, aroma, texture and so on involved in food palatability. In the case of taste, lipids enhance the intensity of sweetness and umami taste of foods, while they suppress their bitterness. Lipids also affect the food palatability related to aroma through the lipid oxidation in foods or the precursor of the aroma compounds such as linoleic acid and linolenic acid. In the case of texture, lipids in foods make them more tender and juicier. Recently, lipids were found to hold aroma compounds in foods and enhance the complexity, mouthfulness, and lingerngness in Koku attributes. Aroma compounds in foods are released from their lipids during chewing foods in oral cavity, and they enhance Koku attributes.
著者
沖谷 明紘 松石 昌典 西村 敏英
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.314-326, 1992-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
116
被引用文献数
5
著者
奥村 朋之 犬塚 雄介 西村 敏英 荒井 綜一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.360-367, 1996-04-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

本研究では真空包装した豚肉を,4°Cで30日間保存した時の官能的並びに理化学的変化を調べ,最適熟成期間について検討を行った.豚肉の味や香りは貯蔵期間20日目まで熟成が進むにつれ強くなり,好ましくなることが判明した.また,25日目まで微生物による劣化に問題はなかった.しかし,30日目に酸臭が発生し好ましくなかった.豚肉の軟らかさは熟成が進むにつれて増大した.また破断応力も30日目まで減少し続けた.遊離アミノ酸は30日目まで増加し続けたが,20日目以降増加割合が減少した.ペプチドは20日目まで増加し続けたが,それ以降の変化は認められなかった.これらの物質は,熟成による呈味向上に貢献していると推察された.イノシン酸は熟成により減少したが,20日目でも1.6μmol/gmeat残存しており,グルタミン酸との相乗効果により豚肉の呈味形成に寄与していると推察された.以上の結果から,豚肉を真空包装し4°Cで貯蔵した場合には,20日目の肉が官能的に最も優れていると結論された.
著者
西村 敏英 江草 愛
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.102-108, 2016-01-20 (Released:2017-01-20)
参考文献数
22
被引用文献数
6

「こく」は,現在,おいしさと同義語で使用されている場合が多い.しかし,「こく」は,味,香り,食感,色,艶と同様に,それぞれの食べ物が有する特性の一つであり,おいしさを決める要因である.「こく」には強弱が存在し,それぞれの食べ物に適した「こく」の強さでおいしさが付与される.「こく」は,食べ物の持つ味,香り,食感による複数の刺激から形成される複雑さによる特性である.これらの複数の刺激は,その食べ物の特徴を決める味わいのベースとなる部分であり,さらに持続性や広がりが付与されたときに「こく」が感じられる.このベース部分からできる味わいに持続性や広がりを与えることができる重要な成分として,現在,うま味物質と油脂が挙げられる.このうち,うま味物質は,味や香りからなる風味質を強くすると同時に広がりや持続性を与える.また,油脂は香気成分を保持することで,「こく」の特性である持続性を与えることができることがわかってきた.
著者
小熊 敦之 芦沢 萌恵 江草(雜賀) 愛 片山 努 古屋 元宏 赤尾 友雪 西村 敏英
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.543-548, 2013-10-25 (Released:2017-08-10)

We examined the effects of vitamin B_1 (B_1) and fat added to a feed on their accumulation and glucose- and lipid-metabolism in the porcine liver. B_1 content in the livers of pigs fed a feed supplemented with 15 ppm B_1-supplemented feed (B+ group) was significantly higher than that in the livers of pigs fed the usual dosage of 1.5 ppm B_1 (Control group). B_1 content in the livers of pigs given a feed with 1.5 ppm B_1 plus 3% fat (F+ group) or a feed with 15 ppm B_1 plus 3% fat (B+F+ group) was significantly higher than that in pigs given a feed with 15 ppm B_1 (B+ group) or controls. The liver fat content in the B+F+ group was lower than that in the B+ group. Analysis of liver mRNA levels showed that gene expression of β-oxidation-related proteins increased in B_1-supplemented groups. Glycolytic pathway- and TCA cycle-related gene expression levels were also increased with fat supplementation. These results indicated that, in pigs with co-supplementation of high dose of B_1 and fat, glucose and lipid metabolism was enhanced in the liver.
著者
田口 昌男 熊谷 日登美 西村 敏英
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.654-658, 2009-09-01

ハウス食品は,日本人にとって最も嗜好性の高い食べものの一つであるカレーの原料「カレールウ」で断トツのシェアを誇る食品のトップメーカーである.カレーのおいしさや健康に関する基礎・応用研究を行ない,バーモントカレー,プライムカレーなどのヒット商品を多数出している.最近では,「ウコンの力」が大ヒットし,香辛料や香辛野菜の健康素材研究にも力を入れている.このように多くのヒット商品を出しているハウス食品には,独自の研究姿勢や人材育成があった.ソマテックセンター所長の田口昌男氏に,ハウス食品の「研究に対する姿勢」や「多彩な人材育成プログラム」などをじっくり語っていただきました.
著者
西村 敏英
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 = The Japanese journal of taste and smell research (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.185-192, 1997-08-01
参考文献数
42

食肉は熟成により軟らかくなると同時に風味が向上する。風味要素のうち、呈味向上には遊離アミノ酸とペプチドの増加が寄与している。特に、遊離アミノ酸の増加はうまみを含む肉様の味の増強に、またペプチドの増加はまろやかさの向上に関与していると考えられる。食肉熟成中のペプチドの増加には、筋肉内エンドペプチダーゼ(カルパインおよびカテプシンBとL)が、遊離アミノ酸の増加には、中性に至適pHを有するアミノペプチダーゼC、HおよびPが貢献していると考えられる。
著者
石井 克枝 土田 美登世 西村 敏英 沖谷 明紘 中川 敦子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.229-234, 1995
参考文献数
25
被引用文献数
7

本研究は牛肉の低温加熱による呈味物質と呈味性の変化についてみたものである.牛肉を薄切りにし,真空パックしたものを40,60,80℃で,10分,1,3,6時間加熱した.遊離アミノ酸は40℃,6時間加熱したときにもっとも多く生成し,酸可溶性ペプチドは60℃,6時間加熱したときにもっとも多く生成した.60℃,6時間加熱した牛肉エキスと,60℃,10分加熱した牛肉エキスの呈味を官能検査により比較すると,60℃,6時間加熱した牛肉エキスの方がまろやかだった.二つの牛肉エキス中の遊離アミノ酸,5'-IMPはほとんど同量であったので,まろやかさは加熱によって増加したペプチドによるものではないかと考えられた.
著者
飯田 文子 堀江 かほり 西村 敏英
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.3-12, 2014 (Released:2015-01-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本研究は,ホルスタイン種牛肉のロースを異なる加熱方法,すなわち焼成と蒸し焼き,煮熟,真空低温,マイクロ波の各方法で,内部中心温度60度に達するまで加熱した後,ロース芯を用いて官能評価と機器測定により食感および味の違いを検討した.ロース芯の加熱損失は,焼成,蒸し焼き加熱で最も小さく,マイクロ波で最も大きかった.調理後の肉の水分含量は真空低温加熱で最も多く,マイクロ波で最も少なかった.調理後の脂質含量は,真空低温で加熱した肉で低い値を示した.破断測定における破断エネルギーはマイクロ波加熱で高値であった.調理後の総アミノ酸含量は真空低温加熱で調理された肉において,最も高い値を示した.官能評価では,焼成および蒸し焼き加熱の肉で多汁性が高く,香りが良く,うま味も強いと評価された.真空低温加熱の肉はやわらかく,うま味が強いが,香りが良くないと評価された.マイクロ波加熱はどの項目においても低い評価値を示した. 以上の結果から,異なる加熱方法によるホルスタイン種牛のロース芯の官能評価特性の差異は,加熱損失,水分含量,うま味成分含量並びに破断エネルギーの差によってもたらされることが明らかとなった.
著者
西村 敏英
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.161-168, 2001
被引用文献数
9 3

肉のおいしさを決定する重要な要因は、肉自身のもつ食感、香り、味である。肉は、適度な硬さ、なめらかな舌ざわりと豊かな多汁性をもつとおいしいと感じる。また、種に特有な肉らしい香りがして、かつうま味が強く、こくやまろやかさを有する肉はおいしいと感じる。これらの肉質の多くは、肉を低温で貯蔵する熟成過程において得られるものである。