著者
里村 多香美 橋本 靖 木下 晃彦 堀越 孝雄
出版者
Japanese Society for Root Research
雑誌
根の研究 = Root research (ISSN:09192182)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.155-159, 2006-12-29
参考文献数
23

生態系の炭素循環における菌類の役割の重要性が認識されているにも関わらず, 野外条件下で菌根菌に分配される炭素量の推定値は数えるほどしか報告されていない。生態系の炭素循環における菌類の役割について定量的な値を用いて議論するため, アカマツ林で外生菌根菌に分配される炭素量を概推した。直接得られなかった土壌中の外生菌根菌バイオマス, 細根 (菌根を含む) と外生菌根菌のターンオーバーの値は, 文献値を参照した。その結果, アカマツ林の外生菌根菌のバイオマスの総量はわずか10.0gm<sup>-2</sup>であると推定され, 細根のバイオマスが少ないことが大きく影響していると考えられた。この林分では菌根菌の生成と枯死サイクルによって年間に消費される炭素は117.0gCm<sup>-2</sup>year<sup>-1</sup>と推定され, 土壌からの炭素の放出の約24%に相当した。アカマツ林は細根のバイオマス, 細根中の菌類含有量, 外生菌根菌のバイオマスが共に文献値よりも非常に低いという特徴があった。森林タイプ間の外生菌根菌のバイオマスの違いに大きく影響を及ぼしているのは, 細根中の菌類含有量の差異よりも細根のバイオマスの差異であった。外生菌根菌のバイオマスが小さい森林においても, 菌根菌の生成・枯死サイクルによって消費される炭素量は無視できないことが改めて確認された。