著者
堀部 陽一
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.11, pp.679-682, 2022-11-01 (Released:2022-11-01)
参考文献数
10

遷移金属化合物における自己組織化した異方的ナノ材料は,その物性の多様性と構造制御の観点から注目を集めている.通常,異方的ナノ構造作製のためには,試料作製条件の調整や高温処理が必要である.一方,スピネル型マンガン酸化物におけるナノメートルスケールでのスピノーダル分解を利用したナノ構造作製は,比較的低温での単純な熱処理のみで可能である.本稿では,磁性スピネル(Co,Mn,Fe)3O4において行われた研究例を紹介する.本系は遷移金属酸化物にもかかわらず,375℃という低い温度での熱処理によりMn-richな正方晶ナノドメインとMn-poorな立方晶ナノドメインが形成される.これらのナノドメインが複雑に相関し合うことでチェッカーボード型ナノ構造やラメラ型ナノ構造が出現し,磁性に影響を及ぼす.