著者
堂寺 知成
出版者
日本結晶成長学会
雑誌
日本結晶成長学会誌 (ISSN:03856275)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.16-23, 2009
参考文献数
68

ソフト準結晶が近年話題になっている.この小論では,まずソフト準結晶創成には多元系,複雑分子を用いるなど5回対称クラスターや新たな長さスケールの導入が必要であることを計算機実験の立場から論じた.また,高次元結晶学を解説し,準結晶探索には近似結晶探索が鍵となっていることを記した.準結晶の起源論には2つあり,エネルギーとエントロピーの2つの立場があるが,エントロピー説に関連して準結晶特有のフェイゾン乱れを解説した.さらに,ABC星型高分子系のタイリング構造を説明し,格子高分子の計算機実験の予測を経た高分子準結晶発見への道筋を解説した.最後に,フェイゾン動力学の考慮も準結晶探索には重要な要素になっていることも論じた.
著者
堂寺 知成
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

古典結晶学で許されない回転対称性を持つ「準結晶」の発見は20世紀後半の物質科学上の大発見の1つであるが、その発見は合金系であり、高分子系では準結晶のような複雑な構造は発見されていなかった。本研究計画において研究代表者ははじめて高分子準結晶を発見し、さらに理論研究を推進することによって、金属(ハードマター)だけでなく高分子(ソフトマター)にも準結晶が存在することを明らかにし、準結晶構造の普遍性を示した。物理と化学の両業界から大きな反響を呼んだ。
著者
堂寺 知成
出版者
近畿大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

研究題目「多元高分子配列ナノ空間物質の構造設計と物性理論」の研究目的は、多元高分子による全く新しい配列ナノ空間構造を設計構築すること、およびその新規物性の理論研究を行うことであった。特にコロイド結晶では作成できない充填密度が低いダイヤモンド構造創製の成果を世界に発信し、物性発現として未来のデバイス、フォトニック結晶への応用可能性を研究することであった。平成21年度は、新しく発見した階層シャイロイド構造の構造解析を進め、実施計画に基づき研究成果の公表準備をした。また、フォトニックバンド計算の精度を高めるべくコンパクト差分法を導入したFDTD法の開発を進めた。この研究には数値計算の専門家に援助を受け、共同研究に発展しつつある。方法論としての有効性を検証しているところである。次に、高分子の作るシングルジャイロイド構造の螺旋軸に注目し、コレステリック液晶あるいは甲虫などに見られる左右螺旋偏光の反射率が異なるという現象が、多元高分子配列ナノ空間物質でも生ずるという仮説を立て、数値実験で確かめた。この研究は継続する予定である。まとめると当該研究期間で、多元高分子による全く新しい配列ナノ空間構造を設計し、自己組織化を用いて2つの新規な構造(巨大ジンクブレンド構造、階層ジャイロイド構造)を構築することに成功した。これらの研究は物質科学、物理および高分子化学の進展に貢献し、学術的にも意義の高いもので、結晶学、数学への関連も重要だと考えている。また理論的には多元高分子のフォトニック結晶への応用可能性を広げた点、これまで議論されなかった偏光実験を提案するなど新しい物性発現の予言を行った点で当初の目標を達成したと言える。