著者
堤 マサエ
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は直系制家族に焦点をあて、どのように世代継承と世代間相互扶助が行われ、バランスを保っているかを明らかにすることであった。ここでは、直系制家族の世代継承はどのようであるか、子育てや老人介護はお互いに世代間で支えあい、衡平性を保っていると言えるのか、を探ってきた。その結果、(1)世代継承に関しては、少子化のため、若い世代ほど長男が跡を継いでいることが明らかになった。「家」を継承するのは長男と決まっていた時代から誰でも可能な時代になったにもかかわらず、長男である重みが現実にはある。また、土地の相続は制度的には均分であるが、一括相続がほとんどであった。このような状況のなかで、地域社会では集団営農、農業の起業化が進められてきている。家族、世帯の持続を地域全体で継承するという方向である。(2)相互扶助関係について、親は子どもが学校へ行き、結婚、独立していく過程において、どのような援助をしているか、を調査した。その結果、男女、きょうだい数に関係なく、親は子どもへの必要な援助を行っている。子どもはどの程度の経済力が親にあるかをわきまえ、援助を得ている。親は誰が老後の面倒をみてくれるかを見極めながら、援助の度合いを調整している。子どもも自分の人生の歩みと親からの援助とがどの程度マッチするかの折り合いをつけ、親子関係の調整を図っている。親子の相互扶助により、親子で衡平性を保っている。それは親の最期の看取りの時期においても同様な世代間相互扶助関係が保たれている。(3)直系制家族は相互扶助を実現しやすい家族形態であるが、住まい方に大きく規定される。屋敷内別棟同居よりも上下階別同居の方が介護は可能である。家族内での世代間の経済援助はお互いに年金、給料を出し合い、助け合う姿があった。世代間衡平性は生活構造的に長期的な見通しの検討が必要であることが示された。
著者
堤 マサエ 大友 由紀子
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

親がどのように子どもの離家・独立・職業選択・結婚の援助をしているか、子どもはどのように認識しているかの実態を明らかにし、世代比較と国際比較の視点から分析した。その結果、若い世代ほど高学歴化し、親の子育て・教育費負担は重い。結婚が一人前の条件ではなくなり、人生における独立することの意味が変化してきた。農村家族は比較的安定した暮らしであるが、若者調査から就職難、親の生活困窮、祖父母の年金で孫の学費を援助するなど世代を超えた援助、奨学金で親子が暮す貧困の実態が新たな問題として出てきた。国際比較から、国際社会の動きに対応し、日本家族の文化や伝統を配慮した子育てとその支援の在り方の重要性が指摘できた。