著者
東野 定律 木村 綾 岩本 真弓 堤 悠香
出版者
静岡県立大学経営情報学部
雑誌
経営と情報 : 静岡県立大学・経営情報学部研究紀要 (ISSN:09188215)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.31-41, 2018-03

本研究では、 静岡県内の介護事業所に行った調査結果と現在キャリアパス制度を導入している介護事業所に対するヒアリング調査を行った結果を基に、 キャリアパス制度を導入することで得られる効果、 導入するにあたっての課題を明らかにし、 介護事業所におけるキャリアパス制度の導入と整備に今後必要であると考えられる内容について提示することを目的とした。 分析した結果、 静岡県内の介護事業所において、 人事評価の仕組みや基準を示していない事業所が約4割を占め、 全体の51.4%が職員に人事評価の仕組みや基準が十分に伝わっていないという状況が明らかになった。 また、 キャリアパス制度がある法人では、 職員の行っている仕事やその役割が明確になっており、 賃金にも仕事の評価が反映する仕組みがあることが示された。 さらに、 調査結果から人事評価を行うにあたって問題を持っている事業所については、 時間がないシステムやノウハウがないといった問題の他に、 評価を行う評価者の能力や人材の問題、 職員に対して人事評価基準の重要性に関する認識を持たせることが課題として挙がった。 今後、 長期的に介護人材の確保や定着の推進を図るためには、 介護職員が将来の展望を持って介護の職場で働き続けることができるように、 能力や技術等に応じた公平な能力評価や人事評価が適切になされることが重要であり、 こうしたキャリアパスに関する仕組みを、 介護事業所に導入していく必要があるといえる。