- 著者
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堤 愛子
川崎 寛也
水澤 一
- 出版者
- 日本調理科学会
- 雑誌
- 日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成23年度日本調理科学会大会
- 巻号頁・発行日
- pp.177, 2011 (Released:2011-08-30)
【目的】食品は様々な味成分や香り成分を含んでいる。いくつかの味や香りは閾値以上だが、閾値以下の成分も含まれているはずである。味覚閾値のうち検知閾値は味の質はわからないが、水とは異なることが感知される閾値とされる。苦味は生得的に忌避される味質であるが、後味が長いことが知られており、検知閾値以下であれば、苦味とは認識されず何らかの刺激をもたらすものと考えられた。そこで、本研究では、閾値以下の苦味がうま味の感じ方に及ぼす影響を、ヒト官能評価を用いて検討した。【方法】100mm Visual analogue scaleを用い、被験者は19-20歳の男女とした。試料は味物質を単体または混合した常温の水溶液とした。苦味物質として硫酸キニーネとナリンジン、うま味物質としてグルタミン酸ナトリウム、食品としてかつお風味調味料を用いた。【結果】閾値以下の硫酸キニーネを含むうま味溶液と含まないうま味溶液のうま味強度を調べたところ、閾値以下の硫酸キニーネを含むうま味溶液のうま味強度が高い傾向であった。一方、閾値以下のナリンジンでは有意な差は検出されなかった。閾値以下の硫酸キニーネの効果を食品においても確認するために、市販のかつお風味調味料を用いた検討を行った結果、うま味強度については有意な増強がみられたが、かつお風味については影響が見られなかった。同様に、うま味の後味の長さに対する影響を検討したところ、閾値以下の硫酸キニーネを混合することにより、うま味の後味は有意に伸びた結果を得た。以上より、閾値以下の苦味は食品のうまみ強度を増強し、うま味の後味を延長させる効果があることが示唆された。