著者
高木 憲太郎 時田 賢一 平岡 恵美子 内田 聖 堤 朗 土方 直哉 植田 睦之 樋口 広芳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.317-322, 2014 (Released:2015-04-28)
参考文献数
17
被引用文献数
4

ミヤマガラスは西日本では九州から東へ越冬地を広げた一方で,東日本では北から南へ越冬地を広げた冬鳥である.我々は東日本に渡来するミヤマガラスの渡りの経路と繁殖地を明らかにすることを目的として,秋田県大潟村八郎潟干拓地において20羽のミヤマガラスを捕獲し,太陽電池式の衛星追跡用送信機(PTT)を装着して追跡を行なった. 八郎潟で越冬していたミヤマガラスは,越冬中も10 km以上離れた男鹿半島や能代平野を行き来しながら過ごしていることが分かった.日本から海に向けて飛び立った地域は,道南の渡島半島(奥尻島を含む)が最も多く,このほか青森県の津軽半島や積丹半島から飛び立つものがいた.渡りの時期は,成鳥は4月5日までに日本を離れているが,若鳥は4月8日以降で,若鳥の方が遅かった.追跡を行なったミヤマガラスのうち11羽は日本海を越えてロシアの沿海地方に渡るまで追跡することができた.そのうち5羽は中国黒竜江省の三江平原周辺に到達し,3羽はロシアのブラゴヴェシチェンスクの東部に到達した.この結果から,東日本に渡来するミヤマガラスの繁殖地がこれらの地域であることが推定された.