著者
高川 晋一 植田 睦之 天野 達也 岡久 雄二 上沖 正欣 高木 憲太郎 高橋 雅雄 葉山 政治 平野 敏明 葉山 政治 三上 修 森 さやか 森本 元 山浦 悠一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.R9-R12, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
7
被引用文献数
8

全国的な鳥類の分布情報データを用いて,各種の分布を決める要因や生息数の増減に影響する要因等を探る上で,どのような生活史・生態・形態的な特性をもった鳥において変化が見られるのかを検討することは,効果的な解析手法の1つである.こうした解析を行なうためには日本産鳥類の形態や生態に関する情報が必要である.そこで,今回,海鳥類を除いた日本でみられる鳥類493種について,生活史や生態,形態の情報についてとりまとめ,データベース化した.このデータベース「JAVIAN Database(Japanese Avian Trait Database)」は,さまざまな研究を行なう上でも有用な情報と考えられるため,ここに公開した.
著者
高木 憲太郎 時田 賢一 平岡 恵美子 内田 聖 堤 朗 土方 直哉 植田 睦之 樋口 広芳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.317-322, 2014 (Released:2015-04-28)
参考文献数
17
被引用文献数
4

ミヤマガラスは西日本では九州から東へ越冬地を広げた一方で,東日本では北から南へ越冬地を広げた冬鳥である.我々は東日本に渡来するミヤマガラスの渡りの経路と繁殖地を明らかにすることを目的として,秋田県大潟村八郎潟干拓地において20羽のミヤマガラスを捕獲し,太陽電池式の衛星追跡用送信機(PTT)を装着して追跡を行なった. 八郎潟で越冬していたミヤマガラスは,越冬中も10 km以上離れた男鹿半島や能代平野を行き来しながら過ごしていることが分かった.日本から海に向けて飛び立った地域は,道南の渡島半島(奥尻島を含む)が最も多く,このほか青森県の津軽半島や積丹半島から飛び立つものがいた.渡りの時期は,成鳥は4月5日までに日本を離れているが,若鳥は4月8日以降で,若鳥の方が遅かった.追跡を行なったミヤマガラスのうち11羽は日本海を越えてロシアの沿海地方に渡るまで追跡することができた.そのうち5羽は中国黒竜江省の三江平原周辺に到達し,3羽はロシアのブラゴヴェシチェンスクの東部に到達した.この結果から,東日本に渡来するミヤマガラスの繁殖地がこれらの地域であることが推定された.
著者
岡久 雄二 小西 広視 高木 憲太郎 森本 元
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.12-18, 2011 (Released:2012-11-25)
参考文献数
11

キビタキFicedula narcissinaの雄について,外部形態に基づく齢査定の方法を検討した.第1回夏羽の個体は第2回夏羽以降の個体よりも自然翼長,尾長とも短かったが計測値は重複が大きかった.また,脛羽の色は第1回夏羽,第2回夏羽,それ以降の第3回夏羽以降の3群でそれぞれ異なっており,第1回夏羽では淡褐色,第2回夏羽では灰黒色の羽が疎らに生え,それ以降の第3回夏羽以降では純黒色の羽が密に生えていた.さらに,虹彩の色は第1回夏羽では灰褐色,第2回夏羽では褐色であり,第3回夏羽以降の個体の多くは赤褐色であった.これらより,キビタキの雄の齢は脛羽と虹彩の色によって第1回夏羽,第2回夏羽,第3回夏羽以降の3群に識別することができると考えられた.
著者
岡久 雄二 小西 広視 高木 憲太郎 森本 元
出版者
The Japanese Bird Banding Association
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.12-18, 2011

キビタキ<i>Ficedula narcissina</i>の雄について,外部形態に基づく齢査定の方法を検討した.第1回夏羽の個体は第2回夏羽以降の個体よりも自然翼長,尾長とも短かったが計測値は重複が大きかった.また,脛羽の色は第1回夏羽,第2回夏羽,それ以降の第3回夏羽以降の3群でそれぞれ異なっており,第1回夏羽では淡褐色,第2回夏羽では灰黒色の羽が疎らに生え,それ以降の第3回夏羽以降では純黒色の羽が密に生えていた.さらに,虹彩の色は第1回夏羽では灰褐色,第2回夏羽では褐色であり,第3回夏羽以降の個体の多くは赤褐色であった.これらより,キビタキの雄の齢は脛羽と虹彩の色によって第1回夏羽,第2回夏羽,第3回夏羽以降の3群に識別することができると考えられた.
著者
藤田 剛 土方 直哉 内田 聖 平岡 恵美子 徳永 幸彦 植田 睦之 高木 憲太郎 時田 賢一 樋口 広芳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.163-168, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
29

アマサギは人に運ばれることなく急速に分布拡大した例とされるが,分散や渡りなど長距離移動には不明な点が多い.筆者らは,茨城県で捕獲されたアマサギ2羽の長距離移動を,太陽電池式の人工衛星用送信器を使って追跡した.2羽とも,捕獲した2006年の秋にフィリピン中部へ移動して越冬したが,その内1羽が翌春に中国揚子江河口周辺へ移動し,繁殖期のあいだそこに滞在した.そこは,前年繁殖地とした可能性の高い茨城県から1,900 km西に位置する.この結果は,東アジアに生息するアマサギにおいて長距離の繁殖分散を確認した初めての例である.
著者
三上 かつら 高木 憲太郎 神山 和夫 守屋 年史 植田 睦之
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.112-123, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

本研究では,渡り性の水鳥類の全国的な渡来地について,規模の大きな渡来地や希少種の渡来地が保護区域に指定されているか,日本に渡来するガンカモ類やシギ・チドリ類の生息に各渡来地がどのように寄与しているのかを解析し,重要な渡来地でありながら保護区域に指定されていない場所の抽出を行なった.河川湖沼の鳥の調査サイト84カ所のうち,35.7%が特別地域,22.6%が普通地域,41.7%が未指定であった.干潟の鳥の調査サイト152カ所のうち,10.0%が特別地域,24.7%が普通地域,66.7%が未指定地域であった.個体数,ラムサール基準値(一部フライウェイ基準値)を超えた種数に着目すると,河川湖沼の鳥が多数訪れるサイトは比較的保護されているが,干潟の鳥が多数訪れる場所については保護指定が遅れている状況が示された.また全ての渡来地を希少種の渡来数に対する寄与率で順位づけしたところ,希少種が多数渡来するサイトは限定的であり,全体的に渡来数数の多いサイトが少数あり,渡来数の少ないサイトが残り多数を占めるという傾向がみられた.したがって,ガンカモ類,シギ・チドリ類といった渡り性の水鳥が集団で生息する特性も考慮すると,保護区による保護が効果的であるといえる.今回検出された寄与率の高かったサイト(大授搦,曽根干潟,泡瀬干潟,宇佐海岸,大阪北港南地区,白川河口など)は優先的に保護区域に指定される必要があるだろう.