著者
塘 久夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.11, pp.1691-1696, 1981
被引用文献数
1

疎水部多鎖構造を有する界面活性剤であるポリ(オキシエチレン)硬化ヒマシ油(EC)およびポリ(オキシエチレン)ソルビトール=テトラオレアート(ESTO)の水への溶存状態を,偏光顕微鏡およびDSCにより検討し,2成分系の相図を得,これらの界面活性剤の溶解挙動をポリ(オキシエチレン)ノニルフェノニルエーテル(NP)との比較において考察した。その結果,溶存状態はいずれの界面活性剤も親水基鎖長の増加にともない,低濃度ではconcentriclamella液晶分散系からミセル溶液へ,高濃度においてはニート相液晶からミドル相液晶,さらにはミセル溶液へと変化した。これは会合体の会合数の減少という方向の変化として説明できた。一方,疎水部の多鎖化により会合数は増大した。曇点がほぼ同じであるNP,ECおよびESTOを同じ組成で比較すると,NPでミセル溶液となる組成でECではミドル相ESTOではニート相の液晶となり,またNPでミドル梢液晶となる組成においてtEC,ESTOともにニート相液晶を形成した。このことはH/Lバランスが同じでも多疎水鎖型界面活性剤の方が疎水的に作用することを示唆した。
著者
小野 茂之 駒田 陽子 有賀 元 塘 久夫 白川 修一郎
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.67-75, 2005
被引用文献数
2

消化管運動は, 睡眠-覚醒リズムと同様なサーカディアンを有しており, 腸内細菌の細胞壁に由来すると考えられるムラミルペプチド類は, 睡眠物質として作用することが知られている.便通状態が, 睡眠健康に影響している可能性が考えられる.本検討では, 便通状態としてローマ基準IIで定義した機能性便秘(FC)および過敏性腸症候群(IBS)に着目し, 東京圏在住の成人若年女性を対象に, 便通状態と睡眠健康の関係を調査用紙による自己申告法を用い調査した.FCおよびIBS群で, 対照群に比べ, 睡眠随伴症に関する得点が高く平日の全日の眠気も強かった.IBS群では, 平日の睡眠時間が有意に短縮していた.生体リズムの同調因子である朝食の欠食頻度が, FC群で高かった.生体リズムに関連した就床時刻, 睡眠時間および睡眠習慣の不規則性も, FCおよびIBS群で高かった.本検討より, 1)FCおよびIBSを含む便通不良群の睡眠健康は, 便通良好群に比べ, 睡眠健康が障害されている, 2)便通状態は睡眠健康に関係していることが示唆された.便通状態と睡眠健康の関係は, 睡眠健康を考える際の要因として注目に値すると思われる.