著者
鈴木 渉 大廣 義幸 塚越 博之 木村 博一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.230-236, 2015-03-20 (Released:2017-07-28)
参考文献数
19
被引用文献数
6 6

わが国では,大量調理施設において,食品従事者由来ノロウイルス(NoV)の食品への二次汚染が原因と推定される大規模食中毒事例が多数発生している.したがって,このような事例を減らすため,調理従事者からNoV を迅速かつ高感度に検出し,対策を講じることは重要であると思われる.現在,NoV 検査法は,主に逆転写リアルタイムPCR(rRT-PCR)法を主体とした遺伝子検査法が使われているが,高感度であるもののコストが高く煩雑なため多検体測定は困難である.遺伝子検査法以外には一般的に簡易で経済的な酵素免疫測定法(ELISA 法)やイムノクロマト法(IC 法)があるものの,感度が十分とはいえない.われわれはこれらの問題を解決すべく,生物発光酵素免疫測定法(BLEIA 法)による全自動NoV 検出システムを新たに開発した.群馬県で発生した感染性胃腸炎事例および健常者ボランティアの糞便計232 検体による評価を,既報のrRT-PCR 法を基準として,BLEIA 法と市販遺伝子検出キットであるloop-mediated isothermal amplification 法(LAMP 法)で実施した.結果,BLEIA 法とrRT-PCR 法の感度,特異度および一致率は,それぞれ93.1%(135/145),100%(87/87)および95.7%(222/232),LAMP 法とrRT-PCR 法ではそれぞれ91.0%(132/145),98.9%(86/87)および94.0%(218/232)となった.BLEIA 法の測定値(COI)とrRTPCR 法より求めたウイルス量とは良好な相関性(r=0.72)があり,またその回帰式とBLEIA 法のカットオフ(COI=1)との交点より検出限界は105 から106 コピー/g 糞便と推測された.類縁ウイルスなどの感染性胃腸炎ウイルスと反応はみられず,交差反応は認められなかった.以上のことから,BLEIA 法は既報のrRT-PCR 法やLAMP 法と同等の感度を有し,ハイスループットなNoV 検査システムであることが示唆された.また,今後の日常的な多数の検便検査,すなわち大量調理従事者などのNoV 検査に応用可能であることも示された.