著者
塩路 理恵子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.326-331, 2014-04-01 (Released:2017-08-01)

本稿では身体表現性障害のうち,普通神経質にかなりの部分が含まれる身体表現性自律神経機能不全,心気障害について入院・外来の症例を提示し,身体表現性障害の森田療法の実際について紹介した.森田はその成り立ちを「とらわれ」から理解し,注意と感覚の悪循環が働くことを指摘した。特に神経質性格を基盤とした身体表現性障害は森田療法のよい適応となってきた.身体の不調に対する不安,疾病に対する恐怖の裏に「仕事をやり遂げるために体調を万全にしておきたい」「健康でありたい」という「生の欲望」をみることも森田療法の重要な視点である.森田療法では身体的な不調や心気的な不安にとらわれ,悪循環によって増悪していくあり方を扱い,とらわれを離れ本来の望みである生活を豊かにしていくことを目指す.生活に注目すること自体が身体状況へのとらわれから焦点を外し,自然な心身のあり方を取り戻していくことでもある.
著者
嶋田 隆一 石井 良和 ボンジェ ペイター 塩路 理恵子
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.581-590, 2021-10-15

要旨:作業療法士(以下,OTR)とクライエント(以下,CL)が,治療関係構築時の経験をどう意味づけているかを理解するために解釈学的現象学による質的研究を行った.回復期病棟入院中のCLとOTR 3組に参与観察と面接を実施した.その結果,治療関係構築の意味づけとして,CLでは6つ,OTRでは5つのテーマが明らかになった.OTRとCLの間には,関係構築のための関わり,経験の共有を通したOTRとCLの関わり,関係の帰結に向けての関わりがあると示唆された.治療関係構築についてOTRは〈思いを汲み取ろうという態度〉と意味づけており,CLは〈改善の兆候の実感〉や〈いまの自分を知ってくれている存在〉と意味づけていた.