著者
高木 雅之 其阿弥 成子 織田 靖史 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.301-310, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1

地域在住高齢者の健康や幸福を促進する作業に焦点を当てた集団プログラムの開発が進められている.本研究では新たに開発された活動日記を用いた集団プログラムの効果を,ランダム化比較試験によって検証した.対象者は地域在住高齢者125名であった.実験群には計4回の集団セッションが実施され,活動日記を毎日記入することが依頼された.対照群に介入は行われなかった.その結果,実験群の作業に対する満足度,生きがい感,生活満足度の変化量は,対照群よりも有意に高く,効果量は中程度であった(p<.001,r=0.3300.38).本プログラムは,地域在住高齢者の作業に対する満足度,生きがい感,生活満足度の向上に寄与することが示された.
著者
丸山 祥 廣瀬 卓哉 宮本 礼子 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.718-725, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
19

本研究では,作業療法士の卒前・卒後教育におけるクリニカルリーズニング学習の現在の知見の整理および先行研究で解決されていない課題であるリサーチギャップの特定を目的とし,スコーピングレビューを実施した.結果,30編が抽出され,8編が実験的・介入研究,22編が記述的・観察研究だった.有効な学習方略としては,臨床実習とケース基盤型学習,サービス学習が検討されていた.学習成果としては量的成果に加えて質的成果も利用されていた.今後のクリニカルリーズニング学習の研究では,多面的な学習成果を捉えた実証研究,ケース基盤型学習の検証,指導者や環境要因に焦点を当てた国際的な比較研究が必要である.
著者
高木 雅之 岡崎 ななみ 宮脇 佳奈 棟田 千比呂 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.674-682, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
31
被引用文献数
3

地域在住高齢者の日々の満足度に影響を与える作業経験を探索した.地域在住高齢者20名を対象に,日記と半構造化面接を用いてデータを収集し,テーマ分析を行った.その結果,一日の満足度に影響を与える作業経験として,つながり─隔たり,承認─否定,貢献─迷惑,努力─怠惰,楽しさ─退屈,進展─後退,上出来─不出来,獲得─喪失,回復─減退という9つのテーマが明らかとなった.1つの作業経験の中には,ポジティブな経験とネガティブな経験が混在することがあり,作業経験の複雑性が示された.本結果は,高齢者が日々の作業経験を理解し,生活の中でポジティブな作業経験を増やしていく手がかりを与えてくれる.
著者
丸山 祥 宮本 礼子 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.188-196, 2022-04-15 (Released:2022-04-15)
参考文献数
20

本研究は新人作業療法士のクリニカルリーズニング学習と教育の経験を分析し,作業療法のクリニカルリーズニング評価尺度(以下,A-CROT)の有用性を検討することを目的とした.新人作業療法士と経験のある作業療法士8組16名を対象に,個別的面接と再帰的テーマ分析を実施した.結果,A-CROT使用が言語・非言語のコミュニケーションによる共同の学習と,4つの思考プロセスの学習の継続に役立ったことから,A-CROT使用の教育効果と触媒効果を確認した.一方,A-CROT使用の実用的課題として,評価方法と評価結果を活用する難しさが挙げられた.今後,A-CROTの手引書や効果的な学習・教育方法の検討が必要である.
著者
丸山 祥 神保 洋平 笹田 哲 宮本 礼子 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.784-792, 2021-12-15 (Released:2021-12-15)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究の目的は,作業療法士の卒前卒後教育のためのクリニカルリーズニングの評価尺度の開発である.開発方法は,Boatengらの尺度開発の推奨段階およびCOSMINの内容妥当性評価の方法論を参考に,1)暫定項目群の収集,2)項目の内容妥当性の検討,3)尺度の内容妥当性の検討を実施した.研究対象者には作業療法教育者に加え,評価対象者である作業療法学生と作業療法士を含んだ.結果,作業療法のクリニカルリーズニングの4つの思考プロセスに基づく40項目と5段階の評定段階から成る評価尺度を作成し,その内容妥当性を確認した.今後,本尺度の信頼性や妥当性を検討する予定である.
著者
丸山 祥 宮本 礼子 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.197-205, 2022-04-15 (Released:2022-04-15)
参考文献数
23

今回,作業療法のクリニカルリーズニングの自己評価尺度(Self Assessment scale of Clinical Reasoning in Occupational Therapy;以下,SA-CROT)の妥当性と信頼性を検討した.作業療法学生135名と作業療法士138名を対象にRaschモデル分析,確認的因子分析,仮説検証,信頼性を検討した.結果,SA-CROTの14項目と5つの評定段階がRaschモデルに適合し,確認的因子分析で4因子モデルが適合した.また,仮説検証で予測した結果が得られ,尺度の妥当性が確認された.再検査信頼性と内的一貫性で基準値を満たし,尺度の信頼性が確認された.
著者
田中 葵 ボンジェ ペイター 橋本 美芽
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.80-88, 2023-02-15 (Released:2023-02-15)
参考文献数
23

作業療法士へのインタビュー調査から,彼らが高齢者に対する住宅改修の中で何を考え,どのように専門性を捉えているのかについて,明らかにした.現象学を用いて分析した結果,彼らはADL・移動に加え,IADL・余暇活動・社会参加の支援をOTの専門性と捉えていることが明らかとなった.またその一方で,住宅改修においてOTが捉えている専門性を発揮しづらいさまざまな制約や課題が存在すること,その状況下でOTは実現可能な方法を模索していることが明らかとなった.以上の結果から,OTの専門性やその専門性の発揮の仕方について明確にし,OTの専門性と健康の関連性を具体的に示す必要性が示唆された.
著者
ボンジェ ペイター
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.2-13, 2018-12-25 (Released:2019-05-10)
参考文献数
30

作業科学や作業療法の文献には,当事者にとって意味のある作業を可能にする目標に向かって,様々なストラテジーから構成されたアプローチが提案されている. そのような典型的アプローチの実施は,当事者にとって健康な生活やウェルビーイングのために,「作業の力」を十分に活用しているかという疑問を生じさせる. 本論文では,行動の中のナラテイィブ(Narrative-in-Action)方法論とトランザクション論(相互浸透論)を媒介(手がかり)にして,人々のおかれている日常の生活とセラピューティック場面から,機会がどのように生じるのかを探る. そのような計画されていない機会を活用することは,人々が病気や怪我の後,自分らしい生活への移行中であるとしても,そして,まだ達成されていない長期的な目標があるとしても,彼らが満足できる生活に近づくだけでなく,むしろ,彼らがそれによって健康やウェルビーイングを経験することになりうる.
著者
嶋田 隆一 石井 良和 ボンジェ ペイター 塩路 理恵子
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.581-590, 2021-10-15

要旨:作業療法士(以下,OTR)とクライエント(以下,CL)が,治療関係構築時の経験をどう意味づけているかを理解するために解釈学的現象学による質的研究を行った.回復期病棟入院中のCLとOTR 3組に参与観察と面接を実施した.その結果,治療関係構築の意味づけとして,CLでは6つ,OTRでは5つのテーマが明らかになった.OTRとCLの間には,関係構築のための関わり,経験の共有を通したOTRとCLの関わり,関係の帰結に向けての関わりがあると示唆された.治療関係構築についてOTRは〈思いを汲み取ろうという態度〉と意味づけており,CLは〈改善の兆候の実感〉や〈いまの自分を知ってくれている存在〉と意味づけていた.