著者
糠谷 明 増井 正夫 石田 明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.73-81, 1979 (Released:2007-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
2 8

希釈した海水が, トマトの発芽, 生育, 収量に及ぼす影響について調査した.(1) 発芽試験開始2日後, Cl濃度の100ppmにより発芽率は減少した. 6日後の発芽率は0から1000ppm Cl間で有意差がなかったが, 2000ppm Clでは80.5%, 3000ppm Clでは21.5%で, 0から1000ppmClより低かった.(2) ホーグランド液で希釈された海水で育てられたトマトの蒸散量は, 海水濃度が増すにつれ減少した.(3) トマトを本葉2枚のステージより40日間, ホーグランド液で希釈された海水で育てた. 葉の新鮮重は250, 500ppm Clで0,100ppm Clより大であったが, 果実収量は0ppm Clで最大であった. 6000ppm Clで枯死株がみられた. 葉の浸透ポテンシャルは海水濃度の増加により減少した.(4) トマトを砂耕で栽培した結果, クロロシスとネクロシスは2000ppm Clでは下位葉にみられた. これらの症状は3000ppm Clではさらに激しく, 下位葉から上位葉にまで認められた. 3000ppm Clでは枯死株もみられた. また, 海水濃度の増加とともに, 葉の新鮮重と果実収量は減少し, 葉のCl, Na含量は増加した.(5) トマトを土耕で栽培した結果, 葉の周縁ネクロシスは海水の濃度が高い場合, 下位葉にみられたが, 3000ppm Clにおいても枯死株はなかった. また, 海水濃度の増加とともに, 葉の新鮮重と果実収量は減少し, 葉のN, P, K, Na, Mg, Cl含量は増加する傾向がみられた. 実験終了時の土壌のCl, 置換性Na, Mg含量及びECは, 海水濃度が高まるにつれて増加した.