- 著者
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増子 恵一
- 出版者
- 専修大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1998
ノコギリハリアリ1個体から抽出できるDNA量を働きアリを材料にしてまず検討した。ノコギリハリアリは体長4mmの微小な種だが、個体あたり400-700ngの高分子DNAが抽出できることがわかった。次にこのDNAを鋳型に用いたPCR法によって、ノコギリアリ個体間のDNA多型の検出を試みた。次のような種々のプライマーを合成し用いた。:(1)CAP-PCR法におけるdegenerateプライマー:(CA)_7および(AC)_7の3'端にDG,DA,DT,DCをつなげたもの(Dはnot C)。さらに(CA)_7および(AG)_7の3'端にHG,HA,HT,HCをつなげたもの(Hはnot G)。(2)(GA)_7および(AG)_7の3'端に4塩基をつなげたもの。(3)(GA)_7および(AG)_7の3'端に2塩基の配列をつなげたもの。)(4)アンカー配列を繰り返し配列の5'端につなげたもの(Wu et al. 1994による):CCAG(GT)_6、CCC(GT)_6、CCT(GA)_6、CCC(GA)_6、GCTTG(GT)_6、GCCA(GA)_6。(6)マイクロサテライトなどの基本単位の数回の繰り返し:(CAG)_5、(TAG)_5、(GATA)_4、(GCGT)_4。さらに制限酵素を併用して、鋳型DNAまたは増殖産物を4塩基識別の制限酵素で消化し泳動する方法も検討した。その結果、特異性の高い(3)のプライマーの1つで常に個体間の多型が生じる別のプライマーも確認した。さらにアガロース電気泳動に加えて、ポリアクリルアミド(+銀染色)も併用し、アガロースでは検出できないわずかな断片長の差異を検出することができた。今回の研究効果だけではまだ手法的には十分とは言えないが、近い将来にノコギリハリアリの血縁解析とreproductive skewの研究に本格的に取り組めるだろうと予測される。