著者
増沢 力 松本 多恵子 韮山 ひとみ
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.105-112, 1975 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7

中国産天日塩の品質向上を目的とし, その不純物を結晶内部と結晶表面とに分類し, その存在量と存在形態とを検討して次の結果を得た.1. 中国産天日塩の塩化ナトリウム純度は94~95%, 不溶解分0.5%, 水分3%程度で, 溶液および固体で存在する不純物ともオーストラリア, アメリカの天日塩に比較してやや多かった. なお, 最近数年間の品質には, 塩化ナトリウム純度はやや向上しているが大きな変化がなかった.2. 中国産天日塩の結晶中の不純物量は不溶解分0.14%, 液泡中の水分0.67%とアメリカなどの天日塩のそれらより多かった. また, 同じく総不純物に対する結晶内不純物量は18~30%で, これが洗浄により品質向上できる限界と考えられた.3. 推定した母液組成のマグネシウム濃度はMg10~43mol/1,000mol H2Oであり海水濃縮線から検討すると濃縮の進んだ組成をしていた. このことは, 硫酸イオンを含む結晶が析出した母液にかん水を混合する方法で, にがりを繰り返し使用すると推定された.4. 中国産天日塩結晶は, 泥土などでやや汚れた1~10mmのやや透明な結晶で, 内部には数η'm~100μm程度の直方体の液泡が多くみられた. このほか, 結晶内部には10~50μmの大きさの主として硫酸カルシウム2水塩と考えられる結晶がみられた.5. 試料中の不溶および可溶性不純物は, 2mm以下に粉砕して不完全洗浄すれば, その50~60%を除去することができた.
著者
米井 祥男 増沢 力
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.269-276, 1967 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13

食塩結晶中の不純物について, 主として4工場の並塩, その他イオン交換かん水析出塩を含む15工場の並塩そして精製塩および局方塩の表面に付着している不純物を洗浄により完全に除去して検討した. すなわち熱および化学分析さらに検鏡, X線回折などにより不純物の組成, 形態および量を検討した結果は次の通りである.(1) 結晶中の不純物の化学組成は, カリウムイオン; 0.013~0.033g/100g 試料 (16~37%), へマグネシウムイオン; 0.007~0.017g/100g試料 (4~7%), カルシウムイオン; 0.003~0.014g/100g 試料 (10~45%), 硫酸イオン; 0.022~0.069g/100g試料 (5~23%) であった.(2) Jäneckeの三角図表. マグネシウムーカリウムの不純物組成から, カリウムが食塩の結晶格子中に混入していることが推定された. この量は塩化カムリウムとして0.02~0.05g/100g 試料で結晶中総量の70~80%にあたる.(3) カルシウムは, せつこうとして結晶中に混入していることを缶内被および結晶中のカノレシウム濃度の違いと偏光顕微鏡で確認した. 塩田かん水および海水直煮の析出塩では混入の仕方には規則性がなく, 大きさも一定でない. 一般には長径; 0.03mm×短径; 0.O1mmの立方柱状が多かった. 化学分析値がカルシウムイオンで0.003g/100g試料の試料を100個検鏡した結果26個の粒子中にせつこうの混入を認めた. イオン交換かん水析出塩では, 他に比してせつこう混入量が多く, 規則的に混入している. 形態はX線回折の結果無水塩を確認した.(4) 液泡量を間接法により推定した結果0.15~0.24g/100g試料であった. イオン交換かん水析出塩の液泡量は製造年によって大きな差があった. 液泡の生成要因として缶内液濃度が影響していることがわかった.
著者
増沢 力 米井 祥男 松本 多恵子
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.199-208, 1976

韓国天日塩の品質およびかん水, 結晶池母液組成について検討し, 次の結果を得た.<BR>1. 韓国天日塩は, 塩化ナトリウム純度88~91%, 水分6~7%, 不溶解分0.3~0.5%, マグネシウム0.3~0.4%, カルシウム0.09~0.17%程度であり, メキシコ, ナーストラリア産の天日塩の品質に比較してかなり劣っている.<BR>2. 韓国天日塩は, 1~2mmの空隙の多い結晶で, 結晶内に多量の母液を含み, 同時に一辺5~20μm程度の液泡を多数含んでいる.<BR>3. 成績が悪いといわれる蘇莱塩田のかん水, 結晶池母液および塩について検討した結果, かん水はほぼ海水濃縮線上にあるが, 結晶池母液は30~32°Beと一般の他の塩田より濃縮がかなり進んでおり, 海水濃縮線からMgSO<SUB>4</SUB>の組成点の方向へずれていた.<BR>4. 韓国天日塩の品質が劣る原因は, 結晶を30~32°Beと濃縮の進んだ結晶池母液から晶出させるため, 結晶内部に液泡が多いこと, 結晶池は10mm程度の浅い水深とするため, 結晶は {111} の方向に急速に成長し, 空隙が多く, その間に母液が多く含まれることおよび1~2日の短期採塩を行なうため, 結晶粒子が1~2mmと小さいことであると推定された.<BR>5. 韓国天日塩の見かけ密度は粗0.7~0.8g/cm<SUP>3</SUP>, 密1.0~1.1g/cm<SUP>3</SUP>と他の天日塩の値より小さかった.
著者
Frank Osborn Wood 増沢 力
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.327-332, 1981 (Released:2013-02-19)
参考文献数
5

米国の東部, 中央部, 北中央部は雨が多く, 天日塩田操業はこは適さないが, 採掘や溶液採鉱に適した地表近くに十分な岩塩層および塩ドームが存在している. 溶液採鉱により生産したかん水は蒸発して固型塩とする. 米国の西部ば乾燥している気候で, かん水源はカリフォルニア太平洋岸, ユタ州のグレート・ソルト・レイクおよびカリフォルニア, ネバダ, ニューメキシコ各州の塩湖沼 (プラヤplaya) である. プラヤでは, 塩は乾燥地の表面から溶解してその後蒸発して天日塩となる.岩塩床は地下60mから1,500mの深さに存在する. その厚さは0.6-600mを超える. 塩は古代海洋から7000万-5億年前に析出したものである, 岩塩床は黒色の水平層を含んでおり, これが1年の析出量を表わすものと考えられている.近代的な岩塩坑の採掘方法は世界中ほぼ一様で, 竪坑を岩塩層まで掘り下げ塩を地表まで引き上げる. 塩は石炭とほぼ同様なroom-and-pillar方式で採掘する. 空所と掘抜部は, ほぼ12-21mの広さで同じ幅かやや小さい柱を残す. 塩ドームの場合では, 空間と柱は平均幅30mでよい. 塩は粉砕と選別のあと13mmから非常な微粉までの製品とする.真空式蒸発法では, 飽和かん水は在来の多重効用蒸発缶に供給される. これらの蒸発缶は, 通常下部が円錐型, 上部が逆円錐型となった垂直のシリンダーのタンクである. 下部円錐体のすぐ上に蒸気コイルがあり, 蒸発用蒸気が送られ撹拌機でかん水を定常状態に撹拌する. 蒸発缶は経済性からふつう3または4重効用である.蒸発中にかん水から塩結晶が析出し, スラリーとして取り出され回転フィルターへ送られる. 真空式蒸発法で得られる塩結晶は粒状塩として知られ, その型が立方体粒子である特徴をもつ. その大きさがほぼ0.15-1mmであるグレーナー塩は米国ではほとんど廃止されている.それは幅約5m, 長さ37-45m, 深さ0.5mの長方形のタンクで製造された. これらのタンクは飽和かん水で満たされ,“フレーク” 型の塩を生産した. アルバーガー塩はフレーク塩とせんごう塩の混合した形態をしている.近代的な天日塩田は, 通常九つの大きい濃縮池と, 一つの濃縮池の面積とほぼ等しいいくつかの連続した結晶池とからなっている. 濃縮池および結晶池間の堤防は, 通常池の底から1mの高さで監視用の車が通れる十分な幅がある.
著者
増沢 力 竹中 况三 藤本 好恵 鍵和田 賢一
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-52, 1978

イオン交換膜法による食塩の固結傾向と一貫パレチゼイション輸送導入による固結への影響とを検討するため, Z, W, P3製塩工場の食塩を, それぞれ生産地と中継地計6場所において, 3と6ヵ月間3パレット36段レンガ積みを対象に, 積付け試験を行ない, 次の結果を得た.<BR>1) 積付け塩のマグネシウムは, ZとWがとくに少なくPは平均, 平均粒径はZとPが小さくWは平均であった. なお, 各工場とも日間, 年間の変動は相当に大きく, これらを小さくする必要があった.<BR>2) 積付け試験結果をみると, Pは3と6ヵ月経過とも固結強さが1kg/cm<SUP>2</SUP>以下で問題ないが, ZとWは, 期間と場所により固結強さが2-5kg/cm<SUP>2</SUP>となり, 注意を要する.<BR>3) すべての積付け場所の食塩の水分は, 保存中に増加した.<BR>4) 固結強さは, マグネシウム量が少ないと, 乾燥吸湿などの気象条件が大きく影響するが, マグネシウムがある程度多いと, 気象条件に関係なく, 固結傾向を小さくすることができた.<BR>5) 約3,700mmある食塩5k93パレット積付け塩袋は, 3カ月経過すると, 積付け時の高さに対して生産地で3.8%, 中継地で2.1%, 6カ月経過すると生産地で同じく4~5%, 中継地で2~3%沈下した. 塩の場合は, 3パレット積みでも倒壊のおそれはほとんどなかった.<BR>6) 固結強さ1.3~3.5kg/cm<SUP>2</SUP>に固結した食塩5kgを, 1mの高さから水平に2回落下させると, 60%以上が砕塊した. それ以上落下させてもあまり効果が増加しなかった.<BR>7) 一般に, イオン交換膜法による食塩の固結傾向は, 塩田法による食塩より小さいが, この原因は, 両者の液組成の差と, 前者が後者にくらべてバラツキ幅が小さくなり, マグネシウムが極端に少ないもの, 粒径が極端に小さいものがなくなったたためと推定された.<BR>8) 一貫パレチゼイション輸送導入以前の食塩の固結強さは1.5kg/cm<SUP>2</SUP>以下であるが, この試験では, 0.3~4kg/cm<SUP>2</SUP>であった. 一貫パレチゼイション輸送導入以降の食塩の固結傾向は大きいようであるが, マグネシウムをあるレベル以上にコントロールすれば, 食塩の固結傾向を低くおさえることができた.<BR>本研究を行なうにあたり, 種々ご協力をいただいた本社塩事業本部, 支部局塩事業部ならびに関係製塩工場の方々に厚く感謝する.