- 著者
-
増田 亜希子
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.771-775, 2013-09-01
はじめに
形質細胞はBリンパ球がさらに分化した細胞であり,免疫グロブリン〔IgG(immunoglobulin G),IgA(immunoglobulin A),IgD(immunoglobulin D),IgE(immunoglobulin E)〕を産生する.形質細胞が単クローン性に増殖したのが形質細胞腫瘍であり,多発性骨髄腫(multiple myeloma,MM),意義不明の単クローン性γグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance,MGUS),原発性アミロイドーシス〔AL(amyloid light chain)アミロイドーシス〕などが含まれる(表1)1,2).
免疫グロブリン遊離L鎖κ/λ比(free light chain κ/λ ratio,rFLC)はネフェロメトリー法によって血清中の遊離κ鎖およびλ鎖を測定し,κ/λ比を算出する検査であり,2011年9月に保険収載された.MMなどの形質細胞腫瘍の場合,遊離κ鎖もしくはλ鎖のどちらか一方が増加するため,κ/λ鎖比が大きく変化する.一方,感染症や自己免疫疾患などの場合,κ/λ鎖比はほとんど変化せず基準値内に収まる.rFLC測定は,従来から用いられている免疫固定法(immunofixation electrophoresis,IFE)に比べて高感度のM蛋白検出法であり,形質細胞腫瘍の診断,予後予測,治療効果判定などに用いられる.特に,非分泌型骨髄腫(non-secretory myeloma)や軽鎖型骨髄腫〔Bence Jones蛋白(Bence Jones protein,BJP)型骨髄腫〕の診断に有用である.
本稿では,遊離軽鎖(free light chain,FLC)検査の測定原理や臨床的意義について概説する.