著者
砂上 史子 秋田 喜代美 増田 時枝 箕輪 潤子 中坪 史典 安見 克夫
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.252-263, 2012

本研究の目的は,戸外と室内という状況の違いによる幼稚園の片付けの実践知を明らかにすることである。戸外と室内の片付け場面の映像に対する3園の保育者の語りを,質的コーディング(佐藤郁哉,2008)の手法を用いて分析,考察した。その結果,次のことが明らになった。(1)戸外と室内に共通して,保育者は主に子どもの遊びを尊重する,片付けを実行する,言葉かけを工夫する,次の活動の見通しを与える,などの方略を組み合わせて片付けを進める。(2)戸外では,活動範囲が広く空間の移動を伴うため,保育者は子どもとの距離に配慮する。(3)戸外では,満足感や必要感から子ども自身が遊びを終えるように,保育者は遊びを尊重したかかわりを行う。(4)戸外では,子どもとの距離の配慮の仕方や,遊びの尊重と片付けの実行とのバランスは,園の構造的特徴に影響される。(5)室内では,空間の移動がないことなどから,保育者は遊びと片付けが重複する状態で片付けを進める。(6)室内では,保育者は子どもとかかわりながら一緒に片付けを進め,言葉かけに留意し工夫する。