著者
岡田 信彦 菊池 雄士 壇原 宏文
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

ブタコレラ菌(Salmonella enterica serovar Choleraesuis)の細胞侵入による血管内皮細胞の宿主反応を明らかにし、引き続き起こる局所炎症反応についての分子メカニズムを明確化することを目的とし、次のことを行った。(1)ブタコレラ菌の血管内皮細胞への細胞侵入能について、ブタコレラ菌野生株(RF-1)およびその細胞侵入能変異株(invA変異株)を用いて、血管内皮細胞(HUVEC細胞)および上皮細胞(HEp-2細胞)に対する細胞侵入性について検討した。RF-1株はHEp-2細胞およびHUVEC細胞の両細胞に対して同様の細胞侵入性を示したのに対して、invA変異株はHEp-2細胞およびHUVEC細胞への細胞侵入能は野生株に比べて明らかに減少していた。(2)ブタコレラ菌の血管内皮細胞への侵入に伴う炎症性サイトカインIL-1α, IL-1β, IL-6,IL-8およびTNF-α)の産生をRT-PCR法を用いたmRNAの定量化を行い、野生株感染血管内皮細胞とinvA変異株感染血管内皮細胞とそれぞれ比較した。その結果、野生株感染血管内皮細胞のみでIL-8の発現が上昇していた。(3)ブタコレラ菌の血管内皮細胞への侵入による接着分子の細胞表面への発現を蛍光抗体法を用いて観察することを試みた。Green fluorescent protein(GFP)を発現するブタコレラ菌野生株を血管内皮細胞に感染させ、各接着分子の単クロン抗体を用いて蛍光染色した。ブタコレラ菌感染5時間後の血管内皮細胞において接着分子、E-selectin(CD62E)、ICAM-1(CD54)およびVCAM-1(CD106)で細胞表面への発現がみられた。