- 著者
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田巻 加津哉
多田 知史
田村 將悟
有末 伊織
米田 弘幸
米田 俊一
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.46, pp.E-212_2-E-212_2, 2019
<p>【はじめに・目的】</p><p>渡邊は、前頭葉症状ともいわれる社会への不適応行動は社会復帰を阻害する大きな問題となると述べている。今回、自己抑制が不十分であった急性期の脳卒中患者2名に対して行動変容療法を実施し、前頭葉機能検査や高次脳機能検査などの客観的な評価を示すことにより、早期からの介入方法の一助とすることを目的とする。</p><p>【症例紹介】</p><p>症例A:50歳代前半、男性、仕事は輸入商社事務。X日に右被殻出血、血腫脳室穿破にて救急搬送、入院となる。入院時(X日)はJCS100、左上下肢BRSⅠ。同日内視鏡下血腫除去術施行し、X+5日にドレナージ抜去となる。合併症として急性水頭症、症候性てんかん、不安神経症等がみられた。</p><p>症例Bは40歳代前半、男性、仕事は税理士。Y日に飲酒後階段から転落され、頭蓋骨骨折、外傷性クモ膜下出血にて入院となる。入院時(Y日)はJCS100、左上下肢BRSⅣであった。Y+4日に右前頭側頭開頭術・脳内血種除去術施行。合併症としては脳浮腫がみられた。</p><p>【経過】</p><p>症例A:X+2日に理学療法開始し、JCS2~3、BRS左上下肢Ⅴ、バレー徴候陽性、感覚障害なしであった。X+14日頃より、出勤を希望する旨の訴え頻回にあり。これに対し、病状の説明と短期目標の明示の反復や、アンガーマネジメントを参考にした指導を行うことによって、適応行動が増えるように試みた。X+21日にHDS-R27点、FAB16点、浜松式高次脳機能検査(以下、浜松式)は全領域で軽度低下、T字杖歩行軽介助であった。X+28日に浜松式で即時記憶・注意障害等で改善傾向であったが、夜間無断外出の未遂や不穏行動がみられた。その後徐々に減少し、X+32日より病棟内独歩が可能となった。X+51日に他院の回復期へ転院し、X+70日頃より徐々に職場復帰した。</p><p>症例B:Y+1日に理学療法開始し、JCS20、左上下肢BRSⅣ、遂行機能障害・注意障害等がみられた。Y+7日に独歩は困難で、「海外に友達がいるので大丈夫」など、状況にそぐわない言動が多く見られる。Y+14日にHDS-R20点、FAB11点、浜松式はdual taskや概念化等が低下し、歩行軽介助であった。この頃より、病状の説明と短期目標の明示の反復や、オセロ他の決められたルールに則る作業を通して、適応行動が増えるように試みた。Y+20日に、HDS-R24点、FAB15点、浜松式は語想起等が改善した。Y+38日では不適応行動の減少みられ、語想起改善の著明となる。Y+46日に自宅退院し、徐々に職場復帰を開始し、Y+100日頃からフルタイム勤務となった。</p><p>【考察】</p><p>今回、行動変容療法として急性期から可能な範囲で自己抑制課題を提供し、それに対して適切なfeedbackにより正の強化因子を提供した。行動変容療法を行ったことに加え、本症例2名は年齢が若く、FABがカットオフ値の11点(長船ら、2014)よりも高い値であった。そのため、病棟内の不適応行動の減少がみられ、最終的に高度な処理や管理を必要とする職場復ヘ帰を果たすことができたと考えた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は脳神経外科 日本橋病院の倫理審査の承認を得ている.カルテや画像所見等から知り得た個人情報は、個人が特定できないように配慮した。 また個人情報に関するデータを院外に持ちだす際には、パスワードを掛けるなどの配慮を行った。本研究は後ろ向き研究であり、退院した2名の対象者には研究の趣旨や内容を電話と書面にて説明し,今回発表することの同意を書面にて得た。</p>