- 著者
-
八木 厚志
都田 艶子
長渕 裕
毛利 政行
斉藤 誠慈
大中 幸三郎
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1995
準線形放物型編微分方程式の安定性を調べる問題を,適当な関数空間における時間変数についての準線形常微分方程式の安定性を調べる問題と定式化し,次にこの常微分方程式に定常解が存在したとしてそのまわりで方程式を線形化してそれに放物型抽象方程式の理論を適用することにより定常解の漸近安定性結果を示した.すなわち,関数空間において解析半群の生成作用素A(u)を係数作用素とし,u=u(t)を未知関数とする準線形常微分方程式du/dt+Au(u)u=f(u),0<t<∞,を考え,それの一つの定常解A(u_0)u_0=f(u_0)を考えた.次に,方程式をu_0のまわりで線形化dv/dt+A(u_0)v+A(u_0)(v,u_0)-f_u(u_0)v=g(t),0<t<∞,し,このときに現れる線形化作用素A_0=A(u_0)+A_u(u_0)(・,u_0)-f_u(u_0)に着目してこの作用素がスペクトル条件{λ∈C;Reλ【greater than or equal】8}⊃σ(A_0),δ>0,をみたせば線形化方程式の基本解V(t,s),0【less than or equal】s【less than or equal】t<∞,は指数関数を用いて評価できることを示した.さらに,公式v(t)=V(t,0)v_0+∫_0^tV(t,s)g(s)dsを用いてu_0の近傍からでる解はすべて時間t→∞と共にu_0に漸近することを示した,併せてその差は時間と共に指数関数的に減衰することも示した.本研究の以上の成果により,準線形放物型方程式に対する定常解の安定性問題はその定常解の線形化作用素がスペクトル条件をみたすかどうかを調べる問題に帰着されることが一般的な枠組みの中で示されたことになる.本研究結果の応用に際しては,具体的な方程式に対してスペクトル条件がいつ成り立つかを調べる問題が生ずる.これを確かめるための一般的な判定条件は,本研究では得ることができなかった.そこで,いくつかの例について数値的にこれを確かめる試みを行い計算データを集めた.このデータから,便利な判定条件を探すのが今後の課題である.