- 著者
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大倉 得史
- 出版者
- 一般社団法人 日本保育学会
- 雑誌
- 保育学研究 (ISSN:13409808)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.3, pp.33-44, 2018 (Released:2019-03-11)
- 参考文献数
- 24
近年,我が国では保育の量的拡大を目指して幼児教育・保育分野の市場化を促すような施策が相次いでおり,いくつかの自治体では公立保育所を民営化する動きが加速している。こうした中,より低コストで保育を行う事業者に保育所の運営が委託されるケースが増えつつある。こうした事業者の変更は,保育の質,あるいは慣れ親しんだ保育者から引き離される子どもたちに,どのような影響をもたらすのだろうか。本研究では,株式会社に運営を委託されたある院内保育所の事例を取り上げ,そこで生じた保育の質の低下が子どもたちの情緒的安定を脅かすまでに至った経緯を明らかにする。その上で,保育の質を保つためには,委託契約期間の延長,最低委託額の取り決め,新旧事業者の義務などの明確化,保育士の給与の改善などが必要であるという結論を導いた。