著者
西岡 利晃 大倉 良司
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

変動圧、特にパルス状加圧を用いた建物外皮の気密性測定法開発のため以下の理論的および実験的研究を行った。理論的には、容器の質量保存の式に、空気の状態方程式を適用して、隙間特性値をパラメータとした容器の圧力変動の式を導いた。この式は非線形微分方程式となり、一般解は求まらず、容器内で空気の発生が無い場合で圧力減衰過程は解析的に解けることを示した。圧力減衰の測定値を解析解に適用することによって、パラメータである隙間特性値を同定する計算法を導いた。実験的には、気密容器と流量測定装置を制作し、面積形状の判明した隙間を対象に定圧法と変圧法(圧力減衰過程)により気密性=隙間特性値を測定した。変圧法では、送風機で給気し一定圧力差を形成してから送風を停止してその後の圧力の減衰過程を用いる方法と、高圧空気ボンベから一気に空気を放出し放出停止後のそれを利用する方法を行った。測定した隙間特性値を相当隙間面積に換算し、実際の隙間面積と比較した。定圧法は、隙間面積の広い範囲で実際の隙間面積とよく一致したが、変圧法(減衰過程)では、隙間面積が大きくなると一致しなくなり、隙間面積の大きさにかかわらずほぼ一定値になる。変圧法(減衰過程)では、気密性が悪くなるとすなわち隙間面積の大きさがある一定値より大きくなると、圧力減衰が急激になり、正確な数値近似が困難になると思われる。高圧空気ボンベの放出を用いるパルス法(パルス状加圧を用いる方法)は、送風機や送風用のダクトが不要で、建物外皮に特別な養生を施さずに行える利点がある。実在建物の気密性能を評価する優れた方法であるが、気密性の高い建物すなわち一定以上の気密性のあるそれにしか適用できない。隙間面積を小さくしたパルス実験で、適用限界を求めた。