著者
大倉 隆介 小縣 正明
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.837-846, 2013-10-15 (Released:2013-12-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1

救急外来を受診する過換気症候群症例の臨床的特徴を明らかにすることを目的として,2004年4月以降6年間に神戸市立医療センター西市民病院(旧・神戸市立西市民病院)の救急外来を受診し過換気症候群と診断された474名(受診件数627件)を対象とし,その症状や検査所見,当院における治療方法および結果を遡及的に検討した。患者の平均年齢は35±16歳,性別は男85名(102件),女389名(525件)であった。受診件数は明らかな季節変動を示し,夏に増加し冬に減少した。身体的疾患の合併に関しては気管支喘息が最も多く64名(13.5%)にみられた。精神科的疾患の既往では神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害が最も多く104名(21.9%)に認められた。救急車による搬送例は348件(55.9%)を占め,非搬送例と比して精神疾患合併例が有意に多く,救急外来での在室時間が有意に長かった。治療としては,鎮静を目的とした薬物投与が322件(51.4%)で行われ,ペーパーバッグ法が122件(19.5%)で施行された。いずれの治療法も,施行した群は施行しなかった群に比して救急外来の在室時間が長かった。過換気発作停止後にSpO2の低下を伴う無呼吸がみられた症例が35件(5.6%)あった。入院を要した症例は7件(1.1%)あった。対象期間中に過換気症候群で当院救急外来を複数回受診した患者は71名(15.0%)あり,その受診回数は平均3.2回,最大18回であった。1か月以内の再受診は37名(72件)あった。複数回受診者が精神疾患を合併する割合は69.4%であったが,受診回数1回の患者では35.6%であった。過換気症候群は,ほとんどの症例において予後は極めて良好であるが,気管支喘息などの他疾患との鑑別困難例や過換気後無呼吸による低酸素血症の発生に注意が必要である。
著者
大倉 隆介 見野 耕一 小縣 正明
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.9, pp.901-913, 2008-09-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
29
被引用文献数
4 6

向精神薬を意図的に過量服薬し救急病院を受診する患者の臨床的特徴及び救急外来における対応の現状を明らかにするために,2004年 1 月以降の 3 年間に神戸市立医療センター西市民病院(旧・神戸市立西市民病院)の内科救急外来に受診した過量服薬患者194名(件数273件)を対象として遡及的に検討した。対象例は同期間の救急外来受診件数全体の0.75%を占めており,平均年齢は36.2 ± 13.3歳,性別は男35名(39件),女159名(234件)であった。推定服薬時刻から来院までの平均時間は 4 時間 9 分であった。救急車による搬送例は167件(61.2%)であった。服用量が多いほど来院時の意識レベルは低かった。服用薬物は大多数が医療機関から処方されたものであり,ベンゾジアゼピン系が最多であった。アルコールの同時摂取例は救急搬送及び入院の割合が高かった。ICD-10に準じた精神科的基礎疾患としてはF3(気分障害)とF4(神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害)が多かった。救急外来で血液検査を施行する頻度は高かったが,心電図や胸部X線撮影を施行する頻度は低かった。また,活性炭投与を施行する頻度は胃洗浄を施行する頻度よりも低かった。全受診例のうち126件(46.2%)が入院を要した。救急車による搬送例はそれ以外の患者と比べて入院を要する割合が高かった。入院例の在院日数の中央値は 2 日であった。死亡例はなかった。当院精神科医への診察依頼があったものは94件(34.3%)あった。救急外来からの帰宅後または退院後 1 週間以内に過量服薬で再受診した症例は21件(7.7%)あった。これらの結果は,一般病院の救急外来を受診する向精神薬過量服用患者の臨床的特徴を示すとともに,救急外来における過量服薬患者への救急医学的,精神医学的対応の現状と問題点を指摘するものであり,今後更なる検討が求められる。