著者
大内 秀二郎
出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.127-146, 2023-09-30 (Released:2023-09-30)
参考文献数
164

本論文の目的は,官報において公告された商業登記や当時の紳士録,各種年鑑などの同時代的史料を活用して,1930年代の東京電気の販売会社の実態を,その設立の経緯や役員の構成,事業所の所在地から明らかにすることである。東京電気は1930年4月に東京市内に3つの販売会社を設立して以降,1939年までには全国(朝鮮を含む,北海道と台湾を除く)を8つのブロックに分割し,それぞれを地域販社が統括する体制を整備した。各販売会社の役員構成や設立の経緯は多様であり,有力電気商を統合して内部化するかたちで設立されたものもあれば,電気商の人・組織を活用せずにその影響を極力排するかたちで設立されたものもあった。多様な形態の販売会社の存在は,東京電気と有力電気商との複雑な関係性を示唆する。
著者
大内 秀二郎
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 = Shokei-gakuso: Journal of Business Studies (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.169-189, 2004-07-01

【概要】日本では, 1950年代の電気洗濯機普及初期において, いわゆる家電メーカー以外の参入が多く見られた。 中でも日本電装(株)は, 参入以来1953年までは電気洗濯機市場において大きな成功を収め, 一時は業界第1位の市場シェアを獲得した。 しかし, 1954年以降, 激化する企業間競争の中で市場における地位を低下させ, 1958年に業界から撤退する。 本稿の目的は, 日本電装のマーケティング活動の分析を通じて, 1960年代以降電気洗濯機市場において大手家電メーカー間の寡占競争が展開されることになった要因を検討する上での示唆を提供することにある。【Abstract】 In 1950s, many 'non-electric goods makers' were entering the electric washing machine industry. Above all, Nippondenso Co., Ltd. (ND) had achieved brilliant success since its entry until 1953. However, after 1954, ND lost its market share and finally pulled out of the market in 1958. Through the case of ND, this paper aims to analyze the reason why non-electric makers had to withdraw from the electric washing machine industry, and to give suggestion as to what brought forth oligopolistic competition only between electric goods makers in 1960s.